ITCの関税法337条調査は侵害品に対する強力な排除命令が得られるメリットがある。ITCへの提訴には、特許で保護された製品に関連する「国内産業要件」を満たす必要がある。国内産業要件は、①工場及び設備への投資、②労働力の雇用及び資本の投入、③特許実施のための投資を立証する必要がある。
関税法337条提訴において、国内産業要件を投資額と各特許への関連を審査した事案
Zircon Corp.(以下Zircon)は電子式スタッドファインダー(stud finder)の製造販売会社である。壁内の木材フレームの位置を電子式に検知する装置と方法に関する米国特許 6,989,662, 8,604,771 & 9,475,185を所有し、2020年にStanley Black & Decker及びBlack&Decker(以下Stanley他)を1930年関税法337条違反でITCに提訴した。ITCは調査の発動を決定し、行政法判事(ALJ)はStanley他の製品の輸入と販売は、関税法337条に違反しないと仮決定した。ITCもALJの仮決定を支持する決定をした。
ITCの決定は二つの理由を根拠とした。先ず、Zirconが「国内産業要件」を満たしていないとのALJ判断を支持した。Zirconはこの点について、工場及び設備への投資、労働力の雇用や資本の投入、特許実施のために投資をしている―などを挙げ、国内産業要件は満足されていると主張した。しかし、ITCは、Zirconは、異なる特許を実施する製品にまたがる投資を集約した集計データに基づく主張をしており、各特許への投資と重要性について適正な立証がないと認定した。
次に、全特許のクレームは無効であり、侵害は生じないと認定した。1件の特許については、4件の公知例に照らして全クレームが自明であると認定し、他の2件についてはいくつかのクレームが自社製品から自明で無効であると認定した。
Zirconは、これらのITCの認定を不服としてCAFCに控訴した。
CAFCはITCの決定を支持し、その理由を次のように述べた。提訴人であるZirconには、係争特許で保護された物品に関連した国内産業の存在を立証する責任がある。Zirconは、実施する14の製品への投資によって、実質的な投資又は重要な投資の要件を満たしていることを示すことができたにもかかわらず、複数の異なる特許の組み合わせを実施する53の製品すべてに対する投資を総額で提示した。Zirconは、投資支出のどの程度が各製品グループに帰属するかを特定する必要がったが、Zirconはその立証責任を果たしていない。
ITCの関税法337条による救済を求めるためには、特有の条件があることに注意すべきである。