CAFC判決

CAFC判決

Veritas Technologies LLC, 対 Veeam Software Corporation 事件

No. 2015-1894,2016,11,30-Aug-16

この判決は、当事者系レビューにおいてクレームを補正する際に特許権者が直面する困難さの例を取り上げている。この判決によれば、審判部が補正の申立てを却下する際に示した理由がこのような背景で正当かどうかを精査することをCAFCは厭わないと考えられる。この事件は、当事者系レビューにおける補正の申立ては、手続き面及び実体面の両方で検討されるべきであることを示唆する。

当事者系レビューにおける補正の申し立てを判断した判決

この事件において、CAFCは、当事者系レビューの手続きにおいて審判部がクレーム補正の申立てを却下したことを取り上げ、提案された補正クレームの特許性を判断するように事件を審判部に差し戻した。

スイスのIT企業であるヴィーム(Veeam Software Corporation)は、ヴェリタス(Veritas Technologies LLC)の特許の5つのクレームに対して当事者系レビューを求めた。

この特許は、アクティブアプリケーションによって検索されたデータに復旧についての優先権が与えられ、コンピュータデータの復旧処理の進行中にアプリケーションがこのデータに即座にアクセスできるようになるコンピュータデータ復旧システム及び方法に関する。

審判部がレビューを開始した後、ヴェリタスは、対象クレームが無効であると審判部が認定した場合に範囲の狭い2つの新たなクレームを提案する補正を条件付きで提出した。

具体的には、ヴェリタスは、提案クレームが、「ブロックレベル」のデータ復旧という広い範囲から、先行技術から予期されないより限定的な「ファイルレベル」の復旧へクレームの範囲を狭めると主張した。

審判部は、対象クレームのすべてが先行技術から自明であるとして特許性を有しないと結論付け、対象クレームが「ファイルレベル」のバックグラウンド復旧プロセスに限定されず、先行技術の「ブロックレベル」の復旧プロセスをもカバーするので、これらのクレームは自明であると判断した。

また、審判部は、ヴェリタスによるクレーム補正の申立てを却下した。提案クレームの特許性について証拠に基づく判断を行うことなく、審判部は、ヴェリタス(及びその専門家供述者)が、クレームに係る特徴の組み合わせの代わりに、各提案クレームで新たに追加された各特徴が先行技術において独立に知られていたかどうかを検討しなかったと結論付けた。

審判部は、この根拠だけに基づいてヴェリタスによるクレーム補正の申立てを却下した。

控訴審において、CAFCは、審判部の判断を検討し、審判部によるクレーム解釈及び自明性分析について同意した。そこで、CAFCは、対象クレームを無効とする判断を支持した。

ヴェリタスによるクレーム補正の申立てに対処して、CAFCは、申立てを却下した審判部の根拠は、ヴェリタスが新たな提案クレームの特徴を別々に議論するのではなく、新たに追加された特徴を他の既知の特徴と組み合わせて議論したに過ぎないということであったことに着目した。

CAFCは、この根拠に基づく申立ての却下が「恣意的かつ当てにならないもの」であると結論づけ、審判部によって引用されたヴェリタスの申立ての文言は、新たに追加された特徴が先行技術であるかを議論する要件を満たすと説明した。

CAFCは、新たな提案クレームの議論に関して、審判部がどのようにしてヴェリタスからこれ以上のものを得られることを合理的に期待できたかを理解できないと判断した。

また、CAFCは、新規で非自明な多くの発明が既知の個別の特徴の組み合わせであると述べた。さらに、CAFCは、組み合わせがどのように特許性を有するかを記載することと、新たな限定がどのように提案クレームを特許可能にするかを記載することとに有意な相違を見出さなかった。

CAFCは、自身の規則が2つの新たな提案クレームに対するクレーム解釈の争点、またはクレーム解釈に関して当事者が利用可能な主張に対処しないことを指摘したのである。

Key Point?この判決は、当事者系レビューにおいてクレームを補正する際に特許権者が直面する困難さの例を取り上げている。この判決によれば、審判部が補正の申立てを却下する際に示した理由がこのような背景で正当かどうかを精査することをCAFCは厭わないと考えられる。この事件は、当事者系レビューにおける補正の申立ては、手続き面及び実体面の両方で検討されるべきであることを示唆する。