CAFC判決

CAFC判決

Vans, Inc. 対 MSCHF Product Studio, Inc. 事件

2nd Circuit, No. 22-1006 (December 5, 2023)

この事件で控訴裁判所は、連邦最高裁判例(Jack Daniel’s事件)の規範に基づいて、被告によるパロディー商品が「言論の自由」により保護されるとする被告の主張を退け、商標権侵害を認定した。

パロディー商品の商標権侵害について判断された事例

Vans, Inc.(原告)は、Old Skoolブランドでスニーカーを販売していた。Old Skoolのトレードドレスは、側面のストライプ等の複数の特徴の組み合わせからなるものである。MSCHF Products Sudio, Inc.(被告)は、原告のスニーカーの全体形状を波形に変えてパロディー化した自社製造のスニーカーを”Wavy Baby”の商品名で販売した。原告は、被告を商標権侵害・トレードドレス侵害でニューヨーク州東部地区地裁に訴えた。被告は「言論の自由」を主張したが、地裁は、被告の商標権侵害とトレードドレス侵害を認め、暫定的停止命令(TRO)と差止の仮処分を発令した。被告はこの判決を不服とし、第2巡回区控訴裁に控訴した。

控訴裁は、2023年の連邦最高裁判例(Jack Daniel’s事件=芸術作品に関しては言論の自由に鑑みて特別な侵害判断基準が用いられるが、侵害品が商標の出所表示機能をもつ場合には、パロディーであっても、通常通り出所の誤認混同を引き起こすかどうかによって侵害判断される)を引用した。そして、被告のスニーカーは原告の商標を出所表示として使用していると判断した。その上で、控訴裁は通常通り誤認混同のおそれを評価し、Wavy Babyスニーカーの出所に関して消費者に誤認混同のおそれがあるとして、地裁の判決を支持した。

この判例が依拠したJack Daniel’s事件連邦最高裁判決については、当所のCAFC判例紹介ですでに取り上げているので参照されたい。