CAFC判決

CAFC判決

U.S. Philips Corp. 対 Iwasaki Electric Co., Ltd.事件

No. 2007-1117,2008,1,2-Nov-07

本件でCAFCは、損害額の算定において、損害額の発生する日付が警告日と認定されるための警告書の要件は、「侵害の事実、および特許権者の存在」を特許権者側の積極的行為によって通知することであると判決しました。さらに、この事件は、数値範囲は厳密にクレーム構成として解釈されるが、範囲から僅かに外れる製品は均等論に基づき侵害していると認定されうることを明らかにしました。

損害額に関する侵害者への警告の要件と数値限定特許への均等論の適用

米国フィリップス(U.S. Philips Corp.)対イワサキ(Iwasaki Electric Co., Ltd.)事件において、CAFCは、ニューヨーク南地区地方裁判所が、侵害訴訟提起後の行為だけに損害賠償を制限したことが妥当か否かについて判決を下した。その判決の中で、CAFCはさらに均等論が数値限定を含む特許クレームにどのように適用されるか分析した。

上訴人である米国フィリップスは、米国特許第5,109,181号(以下、181特許)の特許権者である。この特許は、塩素・臭素・ヨウ素のうち少なくとも1つのハロゲンが10-6~10-4mol/

mm3の間の質量で含まれるガス状混合物を充填した高圧水銀放電ランプを開示していた。

2000年6月7日、Philips International B.V.の社員であるRolfes氏は、レターヘッドがPhilips International B.V.であるレターでイワサキへ警告状を送り、181特許を含むいくつかの特許を侵害している可能性があることをイワサキに警告した。

特許のコピーがそのレターに添付されていたが、そのレターには米国フィリップスが特許権者であること、あるいはRolfes氏が代理人であることを明記していなかった。

しかも、レターには米国フィリップスとPhilips International B.V.とが提携企業であることも言及していなかった。ただし、レターにはRolfes氏を「Philips International B.V.の知的財産法人」を代表する「特許ポートフォリオ管理担当者」と明記していた。

地方裁判所は、そのレターは米国フィリップスを特許権者として明記しておらず、また米国フィリップスの代理であることも表明していなかったことから、そのレターは米国特許法第287条(a)項に基づくイワサキに対する警告書としては不十分であったと判示し、そのレターは侵害の警告書とは見なされないことを理由に、損害額は訴状の提出日である2003年1月8日から計算される、と判決した。

CAFCは、そのレターは警告書として十分であると判示し、地方裁判所の判決を取り消し、警告書の基準をAmsted Inuds. Inc. 対 Bucheye Steel Castings Co.事件、24 F.3d, 178 (Fed. Cir. 1994)から引用し、「第287条(a)項の実際の警告書の要件は、侵害の通知および特許権者の存在の通知であり」、警告は「侵害した被告に通知する特許権者側の積極的行為」によらなければならないと述べた。

CAFCは、イワサキへ送付された181特許のコピーは、その特許権に関する情報を提供していたと認定した。さらに、事実審において、Philips International B.V.が米国フィリップスの代わりに特許ライセンスの管理をしていたことは明白であったと述べた。

その結果、イワサキはそのレターの日付の2000年6月7日以降、あらゆる侵害行為について責を負うものであると判決した。

CAFCはさらに、イワサキのランプが実際の特許製品を侵害していたかという問題について審理した。米国フィリップスはそのクレームの「10-6~10-4mol/mm3の間」は桁の範囲を述べたのであり、正確な数値の範囲ではないと主張した。

桁に関する文言のクレーム解釈では、1.2 × 10-4~2.0 × 10-4

mol/mm3のハロゲン濃度のイワサキのランプが181特許を侵害していることを意味する。

地方裁判所もCAFCも、特許にはその数値を他の方法で扱うことが何も示唆されていなかったことから、その数値は特定の数値範囲を示していると判示して米国フィリップスの主張を却下した。

数値範囲に関する第二の問題は、ほぼその範囲内のランプである、1.2 × 10-4mol/mm3の濃度のイワサキの製品に、均等論が適用されるか否かという点であった。

米国フィリップスは地方裁判所に対し、特定の有効桁数に数値を丸めるとイワサキのランプは侵害していると主張した。

地方裁判所はこの主張を却下し、米国フィリップスは控訴審においてこの主張を断念したが、代わりにイワサキの均等論に基づく侵害を主張し、クレームの数値限定を土地の境界に喩えて均等論の適用を認めなかった。

CAFCは、分別のある陪審員であれば、特定された範囲外のハロゲン濃度が範囲内の質量とさほど異ならないと認定するであろうと述べて、地方裁判所の限定的な解釈を認めなかった。

CAFCは地方裁判所による均等論に基づく非侵害の判決を破棄し、イワサキのランプがランプ自体の基準で侵害しているか否かの審理のため、事件を地方裁判所に差し戻した。

米国フィリップス事件の判決は、潜在的な侵害者に適切な警告書を送付することの重要性を明らかにした。この事件の通り、損害額が発生する日付は警告書が送られた日付に依存する。

さらに、この事件は、数値範囲は厳密にクレーム構成として解釈されるが、範囲から僅かに外れる製品は均等論に基づき侵害していると判断されうることを明らかにした。