CAFC判決

CAFC判決

Hologic, Inc. 対Minerva Surgical, Inc. 事件

CAFC, No. 19-2054 (August 11, 2022)

連邦最高裁は、権利行使されたクレームの権利範囲が譲渡時におけるクレームよりも広くなっているであれば、譲渡人禁反言は適用されないところ判断していた。本件でCAFCは、CAFCは、権利を失うことなく(without prejudice)削除されたクレームも譲渡の対象となったこと、この削除されたクレームと比較すると権利行使された特許のクレームが「問題にするほど広くはなっていない」ことに基づいて、譲渡人禁反言の適用を認めた。

「禁反言の原則」の適用を譲渡人の表明に一貫性がない場合に限定した連邦最高裁判決に基づいて、差戻審において「禁反言の原則」を適用したCAFC判決

発明者のCsaba Truckaiは異常子宮出血(AUB)の治療機器を開発し、特許出願した。発明者は出願に関するすべての権利をNovaCept Inc.(発明者がオーナーの一人)に譲渡した。AUB治療機器はアプリケータ・ヘッドを使用して子宮内膜の異常細胞を破壊・切除するもので、正常細胞の誤切除を防止するため、「透湿防水構造型」のアプリケータ・ヘッドを使用した。この発明に2件の特許(USP 6,872,183/USP 9,095,348)が認められ、連邦食品医薬品局(FDA)の販売承認も下りた。その後、NovaCeptは関連特許及びFDAの販売承認を含むすべての関連事業をHologic Inc.に売却した。

TruckaiはNovaCept.のオーナーを辞任し、2008年に新しくMinerva Surgical, Inc.を創設しそこで新しいAUB治療システムの開発に専念した。Truckaiはアプリケータ・ヘッドを新AUB治療システムにも採用したが、正常細胞の誤切除を防止する技術は「透湿防水構造型」ではなかった。Truckaiの新AUB治療システムにも特許が認められ、FDAから販売承認も下りた。

Truckaiが新しいAUB治療システムを開発したことを知ったHologicは、NovaCeptから買収した特許の継続出願を行い、「透湿防水構造型」のアプリケータ・ヘッドとは無関係に作動する構造を記載したクレームを追加した。継続特許は認められ、Hologicはそれを根拠にしてMinerva SurgicalとTruckai(以下Truckaiと総称)を特許侵害で訴えた。Truckaiは、Hologicの継続特許が親特許の「透湿防水構造」を超えるとして継続特許無効の反訴を行った。この反訴に対し、Hologicは「禁反言」(アサイナー・エストッペル)を理由に、Truckaiには特許無効を争う資格がないと主張した。

地裁はHologicの主張を認め、Truckaiの特許無効の主張を退けた。CAFCも地裁判決を支持した。しかし、Truckaiは連邦最高裁に裁量上訴し、最高裁はCAFCの判決を破棄し、事案をCAFCに差戻した。一般論として譲渡人は「禁反言の原則」の下で譲渡特許の無効を争うことができない。しかしながら、本件で連邦最高裁は、禁反言の原則は認めたものの、その適用については譲渡人の表明に一貫性がない場合に限定されることを明らかにしていた。とりわけ、連邦最高裁は、継続特許のクレームの権利範囲が親出願の譲渡時におけるクレームよりも広くなっているであれば、譲渡人禁反言は適用されないところ、継続特許のクレームの権利範囲が広くなっているかどうかについて更に審理させるために事件をCAFCに差し戻した。

この判決は、連邦最高裁の差戻判決を受けたCAFCの判決である。CAFCは差戻審の結果、改めて「禁反言」を認めた。CAFCは、原出願の審査過程で削除されたクレームについて、これは権利を失うことなく(without prejudice)削除されているためその後の譲渡契約の対象となっていること、この削除されたクレームと比較すると継続特許のクレームは「問題にするほど広くはなっていない」と判断し、Truckaiによる無効主張を退けた。