発明が公知例の組み合わせから自明性を欠くと認定されたにも拘わらず、「二次的考慮事項」を考慮して特許を認めたIPRの決定を否定した事案
MacNeilは実質的に均一な厚さをもつポリマーシートから成る車両用のフロアトレイに関する2件の特許(8,382,186 と 8,833,834)の特許権者である。
Yita LLCは、両特許が先行文献の組み合わせにより自明であるとの理由でIPRを申請した。PTABは、先行文献の組み合わせにより当業者が本件発明に到達できる合理的な可能性があることは認めたものの、MacNeilが提出した商業的成功や長年の懸案事項が解決されたなどの「二次的考慮事項」(Secondary consideration)を考慮し、それらの証言がより説得力をもつとして特許の有効性を認めた。そしてこの2次的考慮の証拠は、審判部が非自明性を判断した唯一のGrahamファクターであった。
Yitaは、①二次的考慮事項の優先はCAFC判例を誤って適用した判決であると主張してCAFCに控訴した。この控訴に対し、先ず、二次的考慮事項となる発明の実施品はクレームと対応しなければならないが公知事項と関連する部分からは二次的考慮事項の要因は生まれない。クレームされている発明を動機づける引例から、その発明が自明であると認めているにも拘わらず特許性を肯定したその審判部の審決を破棄した。二次的考慮事項は、一時的考慮事項で判断がつかない場合の検討事項である。
(コメント)
非自明性の判断は原則として以下の4つの事実認定を踏まえておこなわれる(MPEP §2141)。これは「グラハムテスト」と呼ばれるもので、Graham事件最高裁判決(1966年)で確立された。
1.先行技術の範囲と内容を決定する、
2.先行技術と対象クレームとの差異を明確にする、
3.当業者の技術水準を確定する、
4.2次的考慮事項(secondary considerations)の証拠を評価する。
(1~3の考慮事項で判断が付かない場合に二次的考慮事項が考慮されることになる。本件はそのような場合のCAFC判例の適用が適切であったかどうかが問われたもの。)