CAFC判決

CAFC判決

HIP Inc. 対 Hormel Foods Corp, 事件

CAFC, No. 22-1696 (May 2, 2023)

この事件でCAFCは、共同開発先の従業員の発明への貢献が質的に重要ではなかったとして、この従業員を共同発明者と認めた地裁判決を取り消した。

共同発明者の追加について争われた事件

Hormelは、食品の熱処理器具メーカーであるHIP社のHoward社長と面談し、両者間で二段階調理式オーブンの開発契約が締結された。Hormelは開発契約に基づき、HIPの施設内で赤外線オーブンとスパイラル・オーブンを使ってHIPが製作した試験用オーブンの発色試験を行ったが、上手くゆかず試験場所を自分の施設に移し発色試験等を継続した。その結果、オーブン内の電熱材の電源をオフにすればベーコンなどの食品の焦げ過ぎが回避でき、食品をマイクロウェーブ・オーブンで予熱すれば食品の香りを維持することができることを発見し、ベーコンなどの食品に予熱を加える工程と過熱水蒸気オーブンで調理する工程から成る二段階方式調理法を完成させた。

Hormelは2011年、この二段階方式調理法についての仮特許出願を行い、共同発明者として4名を記載したが、Howardの名前はそこには無かった。この特許出願に特許(9,980,498)が認められた。

HIPは2021年4月、共同発明者の記載不備を主張してデラウエア州連邦地裁に提訴し、Hormelとの面談時に赤外線での予熱調理のアイデアを開示し、HIPの設備を使った発色試験でそのアイデアが使用されたことを理由に、HIP社長であるHowardを共同発明者に加えることを求めた。地裁は、Howardが予熱調理に関するクレーム5についてだけ共同発明者であることを認め、USPTOに対し、Howardの名前を追加した訂正証明書の発行を命じた。この命令を不服としてHormelはCAFCに控訴し、赤外線オーブンを使った予熱調理は周知であり、第一段階の本発明に対する貢献度はそれほど大きいものではないと主張した。

CAFCは、先例(Pannu事件)を引いて、共同発明者として認定されるには「クレームされた発明全体に対する貢献が質的に重要である(not insignificant)もの」(Pannu, 155 F.3d at 1351)でなければならないのに、本件の場合、赤外線オーブンによる食品の予熱調理は、電子レンジを使った場合と比べ「質的に」重要とはいえないと認定して地裁判決を破棄した。

(コメント)

特許実務において共同発明者の扱いは難しい。本件で引用された判例(Pannu事件)では基準として次の3項目を挙げている。(1)発明の着想に何らかの重要な方法で貢献していること、(2)クレーム発明に対しての貢献が発明全体と比較した場合、質的に重要な貢献を行っていること、(3)単に発明者によく知られた概念や現在の技術水準を説明しただけでないこと。