CAFC判決

CAFC判決

Sequoia Technology, LLC 対 Dell Inc. 事件

CAFC, No. 21-2263 (April 12, 2023)

この事件でCAFCは、明細書のような内部証拠と矛盾する専門家証言のような外部証拠に依拠して地裁が用語解釈を行ったのは誤りとして、地裁の無効判決を破棄した。

明細書や審査経過などの内部証拠と明らかに矛盾する外部証拠に依拠して地裁が用語解釈を行ったのは誤りとして地裁の無効判決を破棄した事例

Electronics and Telecommunications Research Institute (ETRI)は、重要データの保存方法に関する特許(6,718,436)を保有する。原告のSequoia Tech.はその独占的ライセンシーである。436特許は「メタデータを最小化する方法」と「コンピュータ可読記録媒体構造」に関するもので、実施例としてextents、disk partitions、logical volumeの3つから構成される「保存仮想化」(storage virtualizations)が記載されていた。

独占的ライセンシーのSequoiaは、Red Hat製ソフトウエア・ツールを使用する企業を特許侵害で提訴した。Red Hatは、436特許の非侵害と無効判決を求める確認訴訟を提起し、併せて2件のIPRを申請した。PTOはIPR開始を認めなかった。

地裁では、クレーム中の用語computer-readable recording medium(コンピュータ読み取り可能な記録媒体), disk partition(ディスクパーティション), logical volume(論理ボリューム)の解釈が争われた。Red Hatは、computer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)にはtransitory medium(信号伝送線などの一時的媒体)が含まれると主張し、その主張を裏付ける専門家証言を提出した。別件(In re Nuijten, CAFC, 2007)でtransitory medium(一時的媒体)は特許を受けることができない主題であると認定されていたため、地裁はRed Hatの主張を受け入れ436特許の一部クレームの無効を判決した。原告はCAFCに控訴した。

CAFCは、436特許のクレームには、computer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)について、狭義にinstruction(命令)を記憶したコンピュータ可読媒体であることが記載されているから、当業者であれば、436特許のクレームのcomputer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)には、transitory medium(信号伝送線などの一時的媒体)を含まないことを理解でき、また、クレームの他の要素においても、一時的な信号とは対照的に、creating logical volume(論理ボリュームを生成する)、storing metadata to the disk partitions(メタデータをディスクパーティションに記録する)などの非一時的記録媒体であることを示すハードウェアに向けられた記載があり、さらに、明細書を参酌すると、computer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)には、CD、CDROM、RAM、フロッピーディスク、光磁気ディスクを含むものとして規定されているから、436特許のcomputer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)は、non-transitory medium(非一時的な媒体)であると解釈した。

このように、CAFCは、クレームの記載、明細書の記載という内部証拠により、computer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)は、non-transitory medium(非一時的な媒体)として解釈すべきであったにも拘わらず、内部証拠と矛盾する外部の専門家証言である外部証拠によりcomputer-readable recording medium(コンピュータ可読記録媒体)は、transitory medium(一時的媒体)を含むと解釈した地裁の判断は誤りであるとして、地裁の無効判決を破棄した。その他の用語に関しては、disk partition(ディスクパーティション)がlogical volume(論理ボリューム)の最小単位であるdiskのsection(ディスクのセクション)である、logical volume(論理ボリューム)が複数のdisk partition(ディスクパーティション、そのサイズはdisk partition units(ディスクパーティション単位)の中で変更可能)の拡張可能な集まりである―とする解釈については地裁に同意し、特許非侵害の地裁判決を支持した。

(コメント)

USPTOは2010年1月、Computer-Readable Recording Medium(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)についての特許適格性ガイドラインを公表している。その中で読み取り可能媒体には、「transitoryなもの」(信号伝送線などの一時的媒体)と「non-transitoryなもの」(一時的媒体を含まない非一時的媒体)が含まれるため、101条の法定主題の要件を満たすためにはnon-transitory(非一時的媒体)なものに限定すべきであると記載している。