CAFC判決

CAFC判決

Interprofession du Gruyere対U.S. Dairy Export Council事件

4th Circuit, No. 22-1041 (March 3, 2023)

この事件で第4巡回区控訴裁判所は、産地を示す文字商標であっても、それが必ずしも特定の産地からの製品でないものに使用されていたために、「普通名称」であるとして、商標登録の拒絶を支持した。

Gruyèreチーズは、紀元前からスイスのGruyère地方で製造され、その後、隣接するフランスの地方でも作られるようになった。今日ではセーヌ川上流の渓谷沿いの町で生産されたチーズとして知られている。スイスとフランスでは 厳しい条件をクリアしたマークにだけ「原産地指定」や「地理的表示」などの保護が認められている。

フランスとスイスの「Gruyèreチーズ協会」(以下、出願人)は、米国商標庁に対し文字商標‘GRUYERE’を共同で出願し、「certification mark」(証明マーク)としての登録を求めた。このマークに対し、米国乳製品輸出協会や民間企業数社は、‘GRUYERE’マークが普通名称であり、商標としての保護適格に欠けるとする異議を申し立てた。

審判部はこの異議申立てを認め、‘GRUYERE’マークの商標登録を拒絶した。出願人は異議決定の破棄をもとめて連邦地裁に提訴した。

地裁は、米国産チーズの中にGRUYEREのラベル付で販売されているものがあり、外国産のチーズにGRUYEREラベルが付けられて輸入されている物がある事実を踏まえ、GRUYEREは普通名称であると認定した。また、2010年に商標出願された‘LE GRUYERE’が普通名称であるとして拒絶されており、それも今回の拒絶査定を支持する一因であった。出願人は第4巡回区控訴裁に上訴したが、控訴裁は、‘GRUYERE’マークが普通名称であるとする下級審の認定を支持した。

なお、米国食料医薬品局(FDA)には“Gruyere cheese”についての表示規定(21 C.F.R.§133.149(a))がある。しかし、そこでの規定は「原産地指定」や「地理的表示」の要件よりはるかに緩やかなものである。そのため、出願人は商標権による強い保護を求めたものと思われる。