CAFC判決

CAFC判決

In Re Monolithic Power Systems, Inc. 事件

CAFC, No. 22-153 (September 30, 2022)

この事件では、従業員がリモート勤務している自宅がテキサス州西部地区にあることを1つの理由として、テキサス州西部地区で訴訟を提起することの妥当性について争われた。CAFCは、テキサス州西部地区で従業員が募集されていたこと、従業員の自宅にかなりの量の実験装置が置かれていたこと重視して、事件の棄却を認めなかった地裁判断を維持した。

リモート勤務地である被告従業員の自宅の所在に基づく裁判地の選択の適否について争われた事件

Bel Power Systems Inc. (原告)は、エレクトロニクス製品用の電源モジュール(power module)に関する特許を保有する。原告は、OEMメーカーに電源モジュールを販売していたMonolithic Power System (被告)を特許侵害でテキサス州西部地区地裁に訴えた。被告は、裁判地が適切でないことを理由として「事件の棄却」又は「カリフォルニア州地裁への移送」を求めるモーションを提出し、具体的な理由として、①被告はデラウエア州法人であり、テキサス州西部地区に「所在していない」、②テキサス州西部地区において財産の所有・貸与がない、③被告のフルタイム社員4名がテキサス州西部地区の自宅からリモート勤務していたが、これは「通常の確立した事業地」ではない―を挙げた。

地裁は、下記の理由から被告のモーションを退けた。先ず、「事件の棄却」について、原告がテキサス州西部地区を重要な事業地であると見做しており、それが州都オースチンに地元顧客のサポート要員を雇っていたことで立証されていると認定した。また、被告の西部地区の社員が職務遂行のために自宅に実験装置や製品を置いている事実からテキサス州西部地区が裁判地として適切であると結論づけた。

「カリフォルニア州への移送」については、第5巡回区控訴裁の判例(In re Volkswagen of America, Inc., 2008)で採用された条件を適用し、地裁は、テキサス州西部地区での審理よりもカリフォルニア州での審理が被告にとって明らかに便利である(convenient)であることが立証されていないと認定して事件の移送を認めなかった。被告は地裁の結論を不服としてCAFCに控訴(petition for writ of mandamus)した。

CAFCはその理由を次のように述べて地裁の判断を支持した。「事件の棄却」については、被告のリモート社員の一人の自宅にかなりの量の機材が提供されており、それを使ってテキサス州西部地区の顧客製品を実験していたという事実が重要であり、したがって地裁が事件の棄却を認めなかったことに根拠がないとはいえない。「移送」については、被告の顧客がテキサス州西部地区に所在しており、その利便性を考慮すべきである。