この事件でCAFCは、コンピュータで実施される「機能」クレームの侵害を立証するために、侵害被疑製品がその機能をそのまま実施するようにプログラムされていることの立証を求めた。
INVT SPEは、無線通信に使用される適合変調符号化(AMC)システムの改良に関するUSP 7,848,439の特許権者である。この特許はExtreme Neworksにライセンスされ、Extreme Neworksはライセンシーとして許諾製品を製造・販売していた。Apple、HTC、ZTEなどのスマートフォンやタブレットが439特許を含む5件の特許に侵害するとして、INVTは国際貿易委員会(ITC)に対し、「関税法337条調査」と特許侵害を理由とする「製品輸入の排除命令」を求めた。337条調査の発動要件の一つに、対象特許が実際にアメリカ国内で使用されていること(「国内産業要件」)がある。INVTは、ライセンシーのExtremeによる製造・投資によって国内産業要件が満足されていると主張した。
ITCは、5件の特許のうち439特許を含む3件の特許について337条調査の発動を決定したものの、最終的には特許非侵害を決定した。(Certain LTE- and 3G-Compliant Cellular Communications Devices, No. 337-TA-1138, 2020 WL 1504741, June 5, 2020)) INVTは、対象の5件の特許のうち、USP 7,848,439とUSP 6,760,590の非侵害決定を不服としてCAFCに控訴した。
439特許に関しCAFCは、ITCが非侵害と国内産業要件の欠如を決定したことを支持し、その理由を次のように述べた。439特許はコンピュータで実施される「機能」をクレームしており、その侵害を立証するためには被疑製品がその機能をそのまま実施するようにプログラムされていることの立証が必要である。本件でINVTはその立証を行っていない。また、590特許は2022年3月に失効しており、今後の救済を考える必要はないのでITCの決定に誤りはない。
本件は、不実施団体(NPE)の特許権者が337条調査を求めた事例として注目された。特許権者がNPEであってもライセンシーの特許実施により「国内産業要件」が満たされることが確認された。なお、CAFC判決では触れていないが、本件の場合、特許権者が訴外特許管理会社との間で結んだリスク管理契約によりNPEの特許行使の権限が制限されていることが指摘されている。