CAFC判決

CAFC判決

Koninklijke Philips N.V. 対 Thales DIS AIS Deutschland GMBH 事件

CAFC, No. 21-2106 (July 13, 2022)

この事件でCAFCは、SEP侵害の排除を求めるITC提訴により回復不能な損害が起きたとする被告モーションを、具体的な証拠で立証されていないとして退けた地裁判決を支持した。

Philipsは無線ネットワークに関連する欧州標準(ETSI)の必須特許(SEP)の特許権者である。Thalesは標準の実施者としてSEPライセンスを求めたが、Philipsとの交渉は不調に終わった。PhilipsはThalesを特許侵害でデラウエア地裁に提訴し、関税法337条にもとづく調査と排除命令を国際貿易委員会(ITC)に求めた。Thalesは、FRANDライセンス料の裁定を求める反訴を地裁に行い、関税法337条調査の差止命令を求めるモーションを地裁に提出した。地裁がThalesのモーションを退けたため、Thalesはその決定を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは、モーションを退けた地裁の決定を支持し、その理由を次のように述べた。Thalesはモーションの根拠として「ITC提訴によって顧客離れが起る」を挙げた。その証拠として一部顧客の宣誓供述書(「ITC提訴があるなら製品を買い控える」)を提出した。地裁は、その証拠がITC提訴の要件である「回復不能な損害」を立証するものではないと認定した。

CAFCはその認定に誤りはないことを認めた。「顧客を失った」「顧客が買い控えした」「新規事業の買収が難しくなった」などを立証するためには具体的な証拠がなければならないが、本件ではそれが提出されていないことをCAFCは認め、地裁判決を維持した。

この事件は、SEPライセンスをめぐり地裁とITCのダブルトラックで争われた珍しいケースである。SEP問題がITCの舞台でも争われる動きとして注目される。