IPRは、地裁での無効裁判に代わる特許無効を争う有力な手段となっている。無効理由に対してmotivation-to-combineの欠如を争う場合に具体的な証拠が求められることがこの事件で明らかにされた。IPRの実務では注意が必要となろう。
PTABがロボット外科手術の分野での一般的な不信感に全面的に依拠して公知例を組み合わせる動機がないと判断したのは誤りであるとされた事例。
Intuitive Surgical Operationsは、外科手術中にメスやハサミなどの器具をロボットアームで安全かつ正確に交換できるシステムに関する USP 8,142,447 の権利者である。Auris Health は447特許についてのIPRを申請し、USP 5,624,398(Smith)とUSP 5,824,007 (Faraz)により447特許は自明であり無効であると主張した。PTABは、IPRの対象クレームがSmith引例とFranz引例の組み合わせにより構成されていることについて認めた。問題は、当業者にSmith引例とFranz引例を組み合わせる動機付けがあったかどうかである。
Aurisは動機付けの理由としてロボットシステムにより外科手術に立ち会う医療従事者の数を大幅に減らすことができる点を主張した。それに対して特許権者は、一般的に施術者はロボットによる施術に懐疑的であり、複雑なSmith引例の施術方法にFranz引例のロボット化された手術台を組み合わせるとさらに複雑になるので、両者を組み合わせようと考えることはないので「当業者の動機付け」はなかったと反論した。PTABの審判官は特許権者の主張を受け入れ、Aurisの特許無効の主張を退けた。AurisはCAFCに控訴。
CAFCはPTABの審決を破棄し、事案を差戻した。PTABがロボット外科手術の分野での一般的な不信感に依拠し公知例を組み合わせる動機がないと判断をしたことをその理由に挙げた。つまり、「ロボットアームによる施術には大きな不安がある」との専門家証言を証拠不十分と認定した。