Zoom会議の出席者に対し営業秘密を保護するための手段を講じなかったとして、営業秘密窃取に基づく差止請求を棄却した判決。裁判所は、秘密保持機能を利用しなかったなどの事実に基づき、営業秘密を保護するための適切な手段を講じなかったとして、営業秘密を窃取したとする請求を退けた。
Zoom会議の出席者に対し営業秘密を保護するための手段を講じなかったとして、営業秘密窃取に基づく差止請求を棄却した判決
Smashは、保護地域でゴミ処理(trash compaction)を行うフランチャイズ事業を行っている。Kandaはそのフランチャイズ事業に参加したいと考え、参加申請を行った。フランチャイズ事業に参加するためには、既存のフランチャイズ事業者やSmashの事業創始者との面接を行わなければならなかった。コロナ禍のため、面接はZoomを利用したオンラインで実施された。Zoom会議で使用される資料は機密情報を含むため、Zoom会議参加者は非開示契約(NDA)への署名が求められた。KandaはNDAに署名し、何回かのZoom会議に参加した。しかし、その後、Kandaは自分でゴミ処理事業(mobile trash compacting business)を開始した。Smashは、営業秘密窃取に基づく暫定的な差止救済を求めてデラウエア衡平法裁判所に提訴した。
同裁判所は、営業秘密保護のための合理的な手段がとられたかどうかを検討し、以下の事実を明らかにした。①Zoomには秘密保持機能があるにも関わらずSmashはその機能を利用しなかった、②Zoom会議の参加者には機密保持義務が課せられなかった、③Zoom会議に参加するためのパスワードは提供されていなかった、④Smashの内規ではSmashの代表者が会議を開始することになっていたがそれが守られていなかった、⑤事前登録した者だけが参加できるというルールも守られなかった、⑥SmashがZoom会議の参加者のすべてを把握している訳ではなかった。
衡平裁判所はこれらの事実を踏まえ、Smashが営業秘密を保護するための適切な手段を講じなかったとして、Kandaが営業秘密を窃取したとする請求を退けた。