CAFC判決

CAFC判決

Sionyx, et al. v. Hamamatsu Photonics K.K. et al.

CAFC No. 2019-2359, 2020-1217,2020,12,7-Dec-20

マサチューセッツ州法にもとづき不当利益の返還請求を認めた判決。CAFCは、マサチューセッツ州法は、訴因から6年を超える出訴を認めないが、原告が契約違反を知った時点はもっと後であり、その出訴期限は陪審が判断すべき事項であること、不当利益の求償権については、損害賠償について定めるマサチューセッツ州法が適用できることを判示した。

マサチューセッツ州法にもとづき不当利益の返還請求を認めた判決

ハーバード大学のEric Mazur教授と彼の研究室のJames Careyは1998年、ブラックシリコンの生成方法を発見し、特許(8,080,467)を取得した。両名は2005年、Sionyx(以下、原告)を設立し、2007年1月に浜松ホトニクス(以下、被告)との間で1年間有効の非開示契約(NDA)を結び、技術援助を行った。NDA契約では、成果物としての知財権は技術提供者が所有すること、当事者は契約終了後、機密情報を返還すること、NDA終了後も7年間機密保持義務が存続すること―が定められていた。原告は、NDA終了後に機密情報の返還を求めず、被告もそれを返還しなかった。

NDA終了後の2009年2月、被告は開発した製品プロトタイプをビジネスショーに展示する旨の電子メールを原告に送った。メールには、展示製品は特許上もNDA上も何ら問題はない旨の一筆が添えられていた。被告は間もなく関連する日本特許出願を行い、海外に対応特許を出願して特許を得た(以下、関連特許)。

原告は2014年、顧客の通告で、原告製品が被告の関連特許を侵害する可能性があることを知った。被告との間で特許の所有権をめぐる協議を行ったが、合意にはいたらなかった。原告は、被告による本件特許の侵害、NDA違反、関連特許の名義変更の認定を求めてマサチューセッツ地裁に提訴した。同地裁の陪審は、原告の請求内容をほぼすべて認めた。被告はトライアル後のモーションで、(1)契約違反と不当利益の返還請求が出訴期限を超えるため無効である、(2)原告には損害賠償の求償権がない、(3)故意侵害を認定すべきでない―を提出したが被告の主張は認められなかった。被告はCAFCに控訴した。

CAFCは、被告の主張についてはほぼすべてを退けた。例えば、出訴期限について、マサチューセッツ州法は、訴因から6年を超える出訴を認めないが(本件では8年後に提訴された)、原告が契約違反を知った時点はもっと後であり、その出訴期限は陪審が判断すべき事項であることを理由に被告の主張を退けた。また、不当利益の求償権については、本件の場合、損害賠償について定めるマサチューセッツ州法が適用できると認定した。