CAFC判決

CAFC判決

Schwendimann 対 Neenah, Inc. 事件

CAFC, No. 2022-1333, 1334, 1427, 1432 (October 6, 2023)

この事件では、特許権者は、複数の引用特許の組み合わせの動機付けについて縷々主張しているが、CAFCは、客観的にみて、引用特許の記載内容から、複数の引用特許の組み合わせの動機付けがあるとして、PTABの決定を支持した。

複数の引用特許の組み合わせの動機付けについて、先行技術に照らして自明であるとして特許を無効としたPTABの決定を支持した事件

Jodi A SchwendimannはTシャツなどにプリントする画像を転写するための多層画像転写シートに関する4件の特許(Re41,623(以下「623特許」)、7,749,581(以下「581特許」)、7,754,042(以下「042特許」)、7,766,475(以下「475特許」))を保有し、Neenah, Inc.を特許侵害で提訴した。さらに、別の特許(7,771,554(以下「554特許」)他)の侵害訴訟も追加的に提起した。

これに対し、Neenah, Inc.(被告)は、最初の4件に554特許を加えた5件の特許について、先行特許5,798,179(Kronzer)と5,655,476(Oez)を無効資料としてIPRを申請した。554特許についてのIPR開始は認められなかったが、他の4件についてはIPR開始が認められた。

PTABは、Kronzer特許とOez特許の組み合わせを、623特許,581特許,042特許の記載から動機付けられ得ると認定して、それらの特許の全クレームが自明のため無効、475特許の一部クレームが自明のため無効であると決定した。

PTABの決定に対し、特許権者のSchwendimannは、(1)当業者がKronzer特許とOez特許を組み合わせようとする動機付けがあったというPTABの認定は実質的な証拠からは支持されない、(2)当業者が両特許を組み合わせれば成功するという期待を持っていたというPTABの認定は証拠から実質的な証拠からは支持されない、(3)Kronzer特許が主引用文献である理由についての説明がないと主張してCAFCに控訴した。

CAFCは以下のように述べてPTABの決定を支持した。

(1)について、イ)Kronzer特許とOez特許は多層転写シートを明示的に教示している、ロ)Oez特許は、白色顔料を転写シートに含めることで濃い色の布地に画像を転写するのに有利になることを明示的に教示している。また、複数の専門家が、これらの先行例から当業者に組み合わせを動機づけられると証言しており、両文献を組み合わせるという発想をもたなかったという主張は説得力をもたない。

(2)について、Schwendimannは、Oez特許は白色顔料を機能させるために架橋ポリマーを使用する必要があるため、提案された組み合わせは教示されず、提案された組み合わせは予測不可能であると主張する。しかしながら、Oez特許は、架橋ポリマーを含む白色顔料を使用したが、架橋ポリマーを含まない白色顔料を使用することを当業者に思いとどまらせるものではなく、また、当業者を提案された組み合わせから離れた方向に導くものでもない。従って、Oez特許の開示は、提案された組み合わせが動機付けられるとするPTABの決定を支持する実質的な証拠である。

また、Schwendimannは、Kronzer特許の転写シートに二酸化チタンを添加することは、転写プロセスを妨害する予測不可能な化学反応を引き起こす可能性があるため、当業者はKronzer特許とOez特許を組み合わせることに成功するという合理的な期待を持てなかっただろうと主張する。Schwendimannの主張は、ただ一人の専門家の証言を根拠とするが、他の専門家の証言および提出された証拠によれば、そのような化学反応が起きないことは明らかであり、PTABの判断に誤りはない。

(3)について、Schwendimannは、PTABにおいて、明示的かつ繰り返し、Kronzer特許には目を向けないであろうことを主張したが、この主張は、Kronzer特許が類似技術であることかを問うものであるため、Kronzer特許が適切な主引用文献であるかの主張とは異なる。

また、口頭審理において、Schwendimannは、Oez特許ではなくKronzer特許を主引用文献とするのは直感に反すると主張し、Neenah, Inc.に当業者がKronzer特許を主引用文献とする理由を説明するよう求めた。Neenah, Inc.はこれに対し、法律は「ある文献を主引用文献とする根拠を示さなければならない」とは規定していない(J.A.567)と説明した。Kronzer特許の層に白色顔料を加えることで、Kronzer特許の転写シートを濃い色の布地に適用する際の改良が可能になるということである。

また、Schwendimannは、PTABが主引用文献の主張を”red herring”と表現することで、Schwendimannの主張を退けたと主張している。しかし、これは、Oez特許が濃い色の布地への印刷を直接扱っているため、好ましい主引用文献であるというSchwendimannの主張と、Kronzer特許が、Oez特許に欠けている有益なものを提供していることをNeenah Inc.が示すことができなかったというSchwendimannの主張に関連するものである。PTABは、この主張はNeenah Inc.は、Kronzer特許に基づいてOez特許の何かを修正または改善することを提案したわけではなく、Oez特許が教示した白色顔料を追加することによってKronzer特許を改善することを提案することに成功したのであるから、“red herring”であると結論づけた。すなわち、Neenah Inc.がKronzer特許がOez特許を改良し得るかを説明できていないというSchwendimannの主張に対するものであり、Kronzer特許を主引用文献として使用することを正当化しなければならないという主張に対するものではない。

Schwendimannは、主引用文献を検討する理由となるような例外的な状況を挙げていないから、Schwendimannの主引用文献の主張は失当であると判断する。しかし、Schwendimannの主引用文献の主張が放棄されなかったとしても、この主張には判例法上の根拠がない。