CAFC判決

CAFC判決

Sanho Corp. 対 Kaijet Technology International Ltd. , Inc.事件

CAFC, No. 2023-1336 (July 31, 2024)

特許法(AIA)によれば、発明者がグレースピリオド内に発明製品を販売しても、その販売行為自体は無効事由とはならない(§102(b)(1)(A))。また、グレースピリオドと関係なく、発明者が開示した発明内容を第三者が特許出願に記載・開示した場合、その記載・開示は公知例とはならない(§102(b)(2)(B))。この規定は「開示された主題が発明者により公に開示されている場合、・・・その開示は公知例とはならない」と定めている。本件では、特許権者Sanhoが発明製品の購入について示したにとどまり、それが一般に公開されたことを立証することができなかった。このため、CAFCは、HyperDriveの販売は「私的販売(private sale)」であり、§102(b)(2)(B)の「一般に公開された(publicly disclosed)」には該当しないと判断した。

グレースピリオド内の発明者による私的販売が一般公開に該当せず、第三者の特許出願が公知例として認められた結果、特許が無効とされた事件

Sanho Corp.が所有する特許(US10,572,429、以下429特許)に対し、Kaijet TechはIPRを申請した。無効資料としてKuo出願(US2018/0165053)を含む複数の先行特許が引用された。

429特許の発明者(Mr. Li)は、429特許の出願前にSanhoに発明製品(HyperDrive)を15,000台販売した。この販売は、Kuo出願の有効出願日前に発生していたため、Sanhoは、最高裁判例(Helsinn Healthcare 事件(2019))を根拠に、Kuo出願が公知例として適切ではないと主張した。しかし、PTABは、HyperDriveの販売があくまでも私的な販売(private sale)であって、その販売は特許法102条(b)(2)(B)に規定する一般公開(public disclosure)には当たらないとしてSanhoの主張を退けた。PTABは、Kuo出願を公知例として認め、IPR対象のクレーム全てを自明を理由に無効と決定した。Sanhoは、この決定を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは、PTABの決定を支持し、HyperDriveの私的販売が特許法102条(b)(2)(B)の定める一般公開には当たらないと判決した。CAFCはその理由を次のように説明した。特許法の規定にある「一般に公開された」(publicly disclosed)とは、当該発明をだれでも利用できる状況にあることを要件とするものであって、本件のように発明者とSanhoの間の販売は「一般に公開された」ことにはならない。Sanhoは、発明に関連する主題が特許法102条(b)(2)(B)に基づいて一般に公開されたことを何ら示していない。そのため、Kuo出願は公知例として適切であり、429特許の当該クレームは公知例の組み合わせにより自明であり、無効である。