CAFC判決

CAFC判決

Rolex Watch 対 Beckertime事件

5th Circuit, No. 22-10866 (January 26, 2024)

この判決で第5巡回区控訴裁判所は、ビンテージ時計にメーカーブランドを付けて販売する行為を商標侵害であると認定したものの、権利行使の遅れを理由に損害賠償請求を認めなかった。

商標侵害が認められたもののラッチェスの抗弁により損害賠償請求が認められなかった事件

Rolex Watch USA(原告)は高級ブランドの時計販売店で、多くのRolex商標を保有する。Beckertime(被告)は、ビンテージ時計の販売店で、販売したRolex時計の中には、原告製の純正部品と他社製の部品を使った中古時計も含まれていた。被告は、それらの販売にあたり、文字盤をダイアモンド加工してRolexのマークを付けて販売した。

原告は、被告が加工して販売したRolex時計は模倣品であるとして、テキサス州北部地区連邦地裁に商標の侵害訴訟を提起した。地裁は、被告による商標侵害を認めたものの、損害賠償については被告のラッチェス抗弁(長期間権利行使しなかったことに基づく抗弁)を受け容れ、請求を退けた。原告はこの判決を不服として第5巡回区控訴裁判所に控訴した。被告も商標侵害が認められたことを不服として第5巡回区控訴裁判所に控訴した。

控訴裁は地裁の商標侵害認定について、以下のように述べて支持した。地裁の事実認定は尊重されなければならない。地裁の事実認定を変更できるのは、明らかな誤りがあった場合だけに限定される。本件で地裁が、消費者に誤認混同が生じるという理由で商標侵害を認めた地裁の判決に誤りはない。

また、控訴裁は、損害賠償を含む救済請求について次のように述べた。救済請求に関しては、①ラッチェス抗弁、②弁護士費用の弁済及び3倍賠償、③差止めの範囲、の3つの争点がある。①について、地裁は侵害に気がついたはずの時点から10年経過後に訴訟が提起されたのでラッチェスが適用されると認定し、原告はこの認定を覆す証拠を提出していない。②について、被告と顧客間の交信録により被告の故意侵害がなかったことが裏付けられているし、原告は弁護士費用を求めるモーションを期限内に行っていないから、3倍賠償と弁護士費用弁済の請求を退けた地裁の判断に誤りはない。③について、争いの対象である時計にとって必須の部品である非純正ベゼルを差止対象から除いた地裁判断には誤りがあるので、この点についての地裁判決を破棄し、地裁に差戻す。