CAFC判決

CAFC判決

Roku, Inc.対Universal Electronics, Inc.事件

CAFC, No. 22-1058 (March 31, 2023)

この事件でCAFCは、先行技術における開示の内容を争点とするCAFCの審理ではPTABの判断が実質的な証拠に基づいているか否かが検討されるにもかかわらず、当事者系レビュー(IPR)の申請人が非自明との決定に対して上訴するにあたりこのような証拠を呈示していなかったとして、上訴人の主張を退けた。

事実認定に誤りが認められないことのみに基づいてPTABの非自明性の判断を支持したCAFC判決

Universal Electronics Inc.は、テレビ、DVDプレーヤー、オーディオ製品とリモコンとの間の無線通信を促進するための方法とシステムに関する特許9,716,853の特許権者である。Roku, Inc.は同特許のクレーム1,3,5及び7についてIPRを米国特許庁の特許審判部(PTAB)に申請した。

PTABでの審理における争点は、先行特許Chardon(US 2012/0249890A)が、本件発明のような、第一通信方法と第二通信方法を含むリストを開示しているかどうかであった。Rokuは、Chardonに異なる家電(TV、DVDプレーヤー、ステレオ装置など)に使用するリモコン・システムが開示されているので当業者が見れば本件特許のクレームとChardonの記載は対応するものであると認識できると主張したが、Chardonに記載されたコマンドコードのリストと、本件発明の通信方法のリストがどのように一致するかについての説明や本件特許のクレーム解釈の証拠が提出されていなかった。PTABは、この問題を解決するため引例の範囲とその内容を周到に吟味し、Chardonが開示するコマンドコードのリストが本件発明の通信方法のリストと同じであるとは当業者は理解しないと認定し、その結果、全ての特許クレームは非自明であるとして、Rokuの特許無効の主張を斥けた。Rokuはこの決定を不服としてCAFCに上訴した。

CAFCはPTABの決定を支持し、その理由を次のように説明した。自明性の問題は、基礎となる事実認定に基づく法律問題であり、CAFCは事実認定についてはPTABの認定を支持する実質的な証拠が存在するかという観点で検討し、法律問題については最初から(de novo)検討する。Rokuは、CAFCでも、Chardonのコマンドコードのリストが本件発明の通信方法のリストが同じであるという事実問題のみを争い、更なる議論を提示しているが、PTABの決定が実質的な証拠に基づかないことは立証できていないから、CAFCはPTABの決定を支持する。

このように、事実問題に関わる事案の場合、控訴審は原審の判断を尊重してその判断に介入しないのが原則である。ただし、本件の場合、PTABでの争点は事実問題であるが、その帰趨となる「自明性」という法律問題については最初からから再審理すべきであるという反対意見が付いている。