CAFC判決

CAFC判決

Roku, Inc. 対 国際貿易委員会(ITC), Universal Electronics, Inc.事件

CAFC, No. 2022-1386 (January 19, 2024)

関税法337条違反に基づく申立ての場合、基礎となる特許が「国内産業」としての活動に当たることを示さなければならない。これが「国内産業要件」と呼ばれるものである。本件は、国内産業製品全体へ投資したかではなく、問題となる特許が製品のサブセットのみに関連するものであれば、製品のサブセットに関連する支出に基づいて国内産業要件の経済的要素を満たすとして、知的財産の活用への十分実質的な投資をしていると判断し、国内産業要件を認めたものである。

輸入スマートテレビが特許侵害であるとして侵害品の排除を求めたITC事件で、特許に直接関連するソフトウェアの開発のために相当額の投資が米国で行われたとして「国内産業要件」が認められた事案

Universal Electrics, Inc.(以下「Universal」)は、Roku.Inc(以下「Roku」)の輸入したスマートテレビが異なる通信プロトコルを接続するためのプラットフォーム特許10,593,196(以下「196特許」)を侵害するとして、国際取引委員会(ITC)に提訴し、関税法337条に基づく侵害品の排除命令を求めた。ITCの審理で被提訴人のRokuは、①Universalは196特許の正当な所有者ではなく、本件を提起できない(申立人適格不存在)、②Universalは国内産業要件を満足していない(国内産業不存在)、③196特許は公知例から無効である(特許無効)―を理由として反論した。

行政法判事(ALJ)は、当初、提訴人Universalと特許発明者Barnettとの間の職務発明移転契約(2004年)は、「将来的に権利を譲渡する単なる約束であり、期待される権利を直ちに譲渡するものではない」として、196特許の提訴人への譲渡が正当になされていないとの仮決定を下したが、ITCはこの仮決定を覆した。その理由としてITCは、2012年に結ばれた別の契約により、196特許の提訴人への譲渡が合意されている点を挙げた。結果として、ITCは、国内産業要件の存在を認め、係争特許が非自明であると決定した。被提訴人のRokuはこの決定を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCはITCの決定を支持し、その理由を次のように述べた。ITCでの争点は、①196特許の所有権をめぐる争点①について、被提訴人は2004年契約に基づく提訴人の権利譲渡が正当になされていなかったと主張するが、ITCが2012年の別契約に基づき譲渡が成立したと認めており、その認定は証拠により裏付けられている。ITCの認定に誤りはない。

国内産業要件をめぐる争点②について、被提訴人Rokuは、国内向製品のコストに関するデータ提出を求めなかったのはITCの手続上の誤りであると主張するが、プラットフォームに搭載されるソフトウェア類の開発投資が米国でなされていること、ソフトウェア投資とサムスン製スマートテレビの関係が証拠により立証されていること、米国内で相当額の投資がプラットフォーム開発に費やされていることが証拠により立証されていること―などにより、国内産業要件が充足されていることは明らかである。よって、ITCの認定に誤りはない。

係争特許の有効性をめぐる争点③について、被提訴人は、2件の公知例から196特許が自明であり、無効であると主張するが、ITCは2件の文献を組み合わせても196特許のクレームの要素を全て開示していないと認定した。ITCは、提訴人の提出した二次的考慮事項(これまで類似製品が市販されていなかったこと)が立証されていることを重視した。二次的考慮事項の方が重要であり、ITCのこの認定に誤りはない。

関税法337条違反に基づく申立ての場合、基礎となる特許が「国内産業」としての活動に当たることを示さなければならない。これが「国内産業要件」と呼ばれるものである。「国内産業とは何か」は必ずしも明確になっていないため、337条提訴ではこの問題が定番の問題として議論されるころが多い。337条違反の救済の場合、排除命令(差止命令)だけが認められ、損害賠償請求は認められないので連邦地裁に訴えることになる。

なお、我々は、同じ当事者間の別の事件について紹介している(Roku, Inc.対Universal Electronics, Inc.事件)。