CAFC判決

CAFC判決

Radio Systems Corporation 対 Accession, Inc.

No. 2010-1390,2011,7,25-Apr-11

この事件は、侵害被疑者が特許権者に対して確認訴訟を提起する際の裁判管轄権に関するものです。この判決では、他州の侵害被疑者に対して特許権者が送付する通常の警告状が、侵害者の州において特許権者に特別管轄権を与えることはなく、また、法廷所在州の外で行われる権利行使活動がその法廷地における裁判管轄権を発生させることはないということが明らかになりました。また、特許権に関する権利行使の取り組み及び防御の取り組みだけが特別管轄権の審理に関係し、特許権者自身の商業上の取り組みは無関係であるということも明らかになりました。

この確認訴訟において、CAFCは、被告の特許権者であるアセッション(Accession)の活動は、テネシー州における裁判管轄権の立証には不十分であることを理由とする、地方裁判所による訴えの棄却を支持した。

CAFCによれば、裁判所が当事者に対して司法権を行使するためには、裁判所は当事者に対する裁判管轄権を持たなければならない。一般管轄権(General personal jurisdiction)は、当事者が法廷地に「継続的かつ組織的な」ビジネス上の接点(business contacts)を持つ場合に発生する。

対照的に、特別管轄権(specific jurisdiction)は、被告が「意図的に自己の活動を法廷地の在住者に向け」、かつ被告の訴えが「それらの活動からまたはそれらの活動に関連して発生する」場合に発生する。

CAFCは、特許法の条文では、他州の侵害被疑者に対して特許権者が送付する通常の警告状は、侵害者の州において特許権者に特定管轄権を持たせるのには不十分であると述べた。

特許権者には、自己の特許権を他者に知らせるための十分な自由度(latitude)が与えられているため、法廷所在州の外で行われる権利行使活動は、その法廷地における裁判管轄権を発生させることはない。

しかしながら、警告状の発送と併せて他の特許権行使活動(例えば、ライセンス活動)が行われる場合は、特定管轄権が認められる場合もあるかもしれない。特許権者に対する確認訴訟においては、特許権に関する権利行使の取り組み及び防御の取り組みだけが、特定管轄権の審理に関係する。特許権者自身の商業上の取り組みは無関係である。

控訴審において、ラジオシステムズ(Radio Systems)は最初に、アセッションの2009年8月以前のテネシー州との接点を考慮することを地方裁判所が拒絶したことは誤りであると主張した。

初期の接触としては、テネシー州における、アセッションとラジオシステムズとの間の、アセッションの製品を説明するための電子メール、電話、手紙、及び対面会議があった。

しかしながら、CAFCは、2009年以前の被告のラジオシステムズとの接触は、その「商業上の」性質が理由で、特定管轄権を確立するには不十分であると考えた。

次に、ラジオシステムズは、アセッションの代理人(counsel)とUSPTOとの間のやり取りがテネシー州におけるアセッションの裁判管轄権を発生させると主張した。

ラジオシステムズは、ラジオシステムズの係属中の特許出願に関してアセッションの代理人がバージニア州のUSPTOに電話をしたことが、テネシー州のラジオシステムズに対する権利行使の試みの一部であると主張した。CAFCは、法廷所在州の外で行われる権利行使活動がその法廷地における裁判管轄権を発生させることはないとして、この主張を退けた。

最後に、ラジオシステムズは、アセッションがテネシー州における2009年4月の会議に関連して守秘義務契約を締結することによって、テネシー州における裁判管轄に同意したと主張した。

この契約は、この契約によって発生するかまたはこの契約に関連するあらゆる訴因について、選択された法廷地としてテネシー州を挙げた法廷地選択条項を含んでいた。ラジオシステムズは、この確認訴訟の裁判管轄権がこの契約によって発生したと主張した。

CAFCは、アセッションとラジオシステムズとの間で共有される情報がもはや秘密ではないために、この訴訟はこの契約によって発生したものではないと認定して、この主張を認めなかった。

この事件は、特許権侵害訴訟の脅威を受けて、よく選択される法廷地に一般管轄権を持たない相手方当事者に対して確認訴訟を提起しようとする当事者が直面するであろう困難を浮き彫りにした。最も好都合な法廷地は、脅威となる企業がその法廷地に特別管轄権を持たないことが理由で、利用できないかもしれない。

Key Point?この事件は、侵害被疑者が特許権者に対して確認訴訟を提起する際の裁判管轄権に関するものである。この判決では、他州の侵害被疑者に対して特許権者が送付する通常の警告状が、侵害者の州において特許権者に特別管轄権を与えることはなく、また、法廷所在州の外で行われる権利行使活動がその法廷地における裁判管轄権を発生させることはないということが明らかになった。また、特許権に関する権利行使の取り組み及び防御の取り組みだけが特別管轄権の審理に関係し、特許権者自身の商業上の取り組みは無関係であるということも明らかになった。