CAFC判決

CAFC判決

Prometheus Labs., Inc. 対 Mayo Collaborative Servs.事件

No. 2008-1403,2011,3,17-Dec-10

この事件においてCAFCは、最高裁判所のBilski判決を踏まえても、"machine-or-transformation"テストが発明の特許の適格性を評価するための強力なツールであるということを、我々に思い起こさせました。また、特許されている発明の特徴も、日本の実務からみれば、相当緩やかな特定で特許となっています。

最高裁判所からの差し戻しを受けて、CAFCは、特許された請求項は特許可能な主題に向けられたものであるとして、地方裁判所による101条に基づく特許無効の略式判決の認定を再び覆した。

2010年6月、最高裁判所は裁量上訴(certiorari)を認め、CAFCによる先の判決を破棄し、Bilski 対 Kappos 事件, 561 U.S. _, 130 S. Ct. 3218 (2010)における最高裁判決を考慮して更に検討するように事件を差し戻した。CAFCは、先の判決において、その当時に確立していた”machine-or-transformation”テストの下で、本件方法が対象を変換させるものであるとして、請求項は特許可能な主題に向けられていると判示していた。

係争対象特許は、胃腸及び非胃腸の自己免疫疾患を治療するために使用されるある薬品の投薬量を決定する方法をクレームしている。その特許された発明の特徴は「患者内の薬品の代謝物のレベルを判定し、そのレベルを所定の値に照らして評価し、評価されたレベルが、効能を最大化し有毒性を最小化するために、投与すべき薬品の量を増やすまたは減らす必要性を示すこと」にある。

差し戻し審においてプロメテウス(Prometheus)が主張したことは、最高裁判所のBilski判決は異なる結論を余儀なくするものではない、なぜなら、請求項は”machine-or-transformation”テストを満足するのみならず、Bilskiとは違って抽象的なアイデアに対して特許を付与することに向けられている訳でもないからである、というものであった。

プロメテウスは、請求項は自然法則自体をクレームするのとは対照的に、患者の身体での変換を伴い、自然法則の応用を伴うと主張した。応用には、特定の薬品を用いて具体的な病気を治療する具体的な手段を使用することが必要とされる。

他方、メイヨ(Mayo)は、請求項は、患者内の代謝物のレベルと薬品の効能との間の自然の相関を使用するもの全てを独占するものであるとして、無効であると主張した。

メイヨは、Bilskiにおける5人の判事(Justice)は、以前の意見である Laboratory Corp. of America Holdings, Inc. 対 Metabolite Laboratories, Inc., 548 U.S. 124, 138-39 (2006)(この事件は、似たようなタイプの請求項に対するPrometheusによる変換の主張を拒絶するものである)を支持することを明確に示していたと主張した。

メイヨはまた、最高裁判所による破棄及び差し戻しは異なる分析を要求するものであると主張した。

CAFCはメイヨに同意せず、再びプリメテウスの請求項は特許の適格性を有すると考えたがその判断の根拠は、請求項は、自然の相関に関する特定の応用を伴う具体的な治療ステップ、即ち、具体的な薬品を投与し具体的な代謝物を測定することにより具体的な病気を治療することを挙げているというものであった。

CAFCは、請求項が、薬品の代謝物の変化を引き起こす薬品を投与した後に患者の身体で変換することで代謝物の濃度を測定可能にするという、CAFCによる以前の考えを再び肯定した。

CAFCは、薬品が投与された後に体内での自然なプロセスの結果として患者での変換が発生するということは、特許性に関する目的のためには問題とはならないと述べた。むしろ、CAFCは、そのような変換は特許による保護の目的のために十分であると考えた。

CAFCは、代謝物(のレベルを測定することは身体的なサンプルからの操作を伴うから請求項は純粋なデータ収集であるとした、地方裁判所の判断を破棄し、更に、代謝物のレベルを判定することに伴う変換は、クレームされた方法の本質的部分であると考えた。

それゆえ、CAFCは、地方裁判所の判決を覆し、特許無効の略式判決を求めるメイヨの請求を棄却する指示と共に差し戻しを行ったのである。

この判決が我々に思い出させたことは、特定の請求項が特許の適格性を有するか否かを評価するに際して、”machine-or-transformation” テストは強力なツールのままであるということである。

この判決は更に、最高裁判所のBilski判決が特許可能な主題の範囲全体に対してあまり影響を与えないように見えるということの、一つの証拠となる。仮にメイヨが再び裁量上訴を請願したならば、この事件は、Bilski後の特許可能な主題の範囲を最高裁判所が更に明確にする可能性の機会を残すであろう。

Key Point?この事件においてCAFCは、最高裁判所のBilski判決を踏まえても、”machine-or-transformation” テストが発明の特許の適格性を評価するための強力なツールのままであるということを、我々に思い出させた。また、特許されている発明の特徴も、日本の実務からみれば、相当緩やかな特定で特許となっている。