この事件は、特許権が紛争に関与する場合であっても、米国の裁判所が仲裁条項の行使に好意的であることを示した点で重要です。別の争点に関する訴訟が係属中の場合であっても米国の裁判所は仲裁のための契約を行使する可能性が高いことを当事者は理解すべきです。
この訴訟は仲裁条項の効力をめぐるプロメガ(Promega Corp.)とライフテクノロジーズ(Life Technologies Corp.)の間の紛争に関するものである。
1996年に、Research Genetics, Inc.(以下、RGI)とプロメガは遺伝子による本人性識別を対象とするドイツ、米国、欧州、そして日本の特許権に関するライセンス契約(以下、96年契約)を交わした。
96年契約は「本契約から生じるか、本契約に関する、またはその不履行に関するすべての論争または紛争は仲裁にて解決される」ことを定める条項を含んでいた。
一連の譲渡を通じて、96年契約の下でのライセンサーとしてのRGIの権利は子会社のIPホールディングズに譲渡された。これと同時に、そしてこれに続いて、合併及び名称変更を通じて、RGIに関連する事業はライフテクノロジーズの一部になり、IPホールディングズと呼ばれる会社はライフテクノロジーズの完全子会社になった。
IPホールディングズは96年契約の下でのライセンサーとしてのすべての権利を維持したが、プロメガは必要なロイヤリティの支払いをライフテクノロジーズに対して行った。
2010年5月に、ロイヤリティの支払額に関して紛争が生じた後に、ライフテクノロジーは96年契約の仲裁条項に従って仲裁を要求した。プロメガは仲裁を提起するのではなく、96年契約の下でのライフテクノロジーズの請求と、5件の米国特許権の侵害の請求とは仲裁不可能であることの確認判決を求めてライフテクノロジーズを相手に訴訟を起こした。
プロメガは特に、96年契約の下での権利はライフテクノロジーズに何も譲渡されていないので、ライフテクノロジーズは仲裁を要求する資格を有さないと主張した。これに応じて、IPホールディングズは仲裁を要求した。地方裁判所はライフテクノロジーズによる仲裁の要求を拒否したが、IPホールディングズによる仲裁の要求を認めた。
控訴審において、CAFCは判決に先立ち、米国連邦仲裁法(FAA)が紛争解決の方法を当事者が契約で定めている場合に仲裁を奨励する国策を規定して、有効な書面上の仲裁条項の行使を義務付けていると述べ、次に、仲裁に反対するプロメガからの主張のそれぞれを扱った。
プロメガは当事者が「仲裁条項を行使してもよい」ので、仲裁条項は強制的なものではなく随意的なものであると主張した。しかしながら、CAFCは、当事者が仲裁を要求することを契約は強制しないが、当事者が仲裁を要求したならば、96年契約の平易な文言は仲裁が随意的ではなく強制的なものであることを示していると判断した。
プロメガはまた、IPホールディングズは単なるダミー子会社であり、この会社と、関与する実在の当事者であるライフテクノロジーズとの間を仲裁する契約は存在しないと主張した。CAFCは、デラウェア州法の下でIPホールディングズは良好な状態の企業であることに着目してこの主張を却下した。
プロメガはさらに、地方裁判所においてライフテクノロジーズに対して特許権侵害の請求が係属中であることを理由に、仲裁に反対する主張を行った。
CAFCは、地方裁判所におけるプロメガによる侵害の請求は仲裁可能な請求と関係を有さないことを理由にこの主張を棄却し、「段階的訴訟」は仲裁のための契約の行使を拒絶するための根拠にはならないことを説明した。これらの理由から、CAFCは仲裁を強制する地方裁判所の命令を支持した。
この事件は、特許権が紛争に関与する場合であっても、米国の裁判所が仲裁条項の行使に好意的であることを示した点で重要である。別の争点に関する訴訟が係属中の場合であっても米国の裁判所は仲裁のための契約を行使する可能性が高いことを当事者は理解すべきである。
Key Point?この事件は、特許権が紛争に関与する場合であっても、米国の裁判所が仲裁条項の行使に好意的であることを示した点で重要である。別の争点に関する訴訟が係属中の場合であっても米国の裁判所は仲裁のための契約を行使する可能性が高いことを当事者は理解すべきである。