CAFC判決

CAFC判決

Pacific Biosicences of California, Inc. 対Personal Genomics Taiwan, Inc. 事件

CAFC No. 20 22-1410, 2022-1554 (January 9, 2024)

本判決でCAFCは、明細書やクレームを重視したクレームの用語解釈を行った他、PTABによる引例の解釈が合理的であるとして専門家証人に基づく引例の再評価を行わなかった。

新規性及び非自明性に関し、クレーム解釈と、専門家証人による引例解釈が争われた事件

Personal Genomics Taiwan, Inc. (PGI)は、「単一生体分子の特定のための方法と装置」に関する特許7,767,441を保有する。441特許の明細書には「1万個以上の単一生体分子を並行して検査し、サンプル中の生体分子を特定することができる」と記載されていた。Pacific Biosciences of California, Inc. (PacBio)は、441特許に対し2件のIPRを申請し、あるクレーム群には米国公開特許を、別のクレーム群にはPCT出願を無効理由として提出した。PTABはIPRの開始を決定し、「単一生体分子の特定」(identifying a single biomolecule)の用語解釈がIPRで争われた。

PTABは、米国公開特許に基づく無効理由について、IPR申請者の主張を退け、対象クレームを有効と決定した。他方、PCT出願に基づく無効理由については、先行特許の開示により441特許の対象クレームが自明であり、当該クレームは無効であると決定した。特許権者及びIPR申請者は、双方CAFCに控訴した。

PacBioは、米国特許の無効理由を退けたPTABの決定について、「単一生体分子の特定」を「装置が対象となる1種類の生体分子を検査することで単一の生体分子を特定できるようにした」と解釈したのは誤りであると主張した。しかし、CAFCはPacBioの主張を退け、その理由を次のように説明した。用語解釈は、明細書やクレームなどの内部証拠によって行われなければならない。本件の場合、「単一の」(single)という形容詞があることに明細書に記載されていることに注意する必要がある。それは一種類の生体を検査していることを示すためのものである。PTABの解釈に誤りはない。

PGIは、PCT出願に基づく無効理由を認めたPTABの決定について、PCT出願には生体分子の十分な検出感度が開示されていないと主張し、専門家証人が提出した分析結果に依拠した。しかし、専門家証人が述べるような計算は先行技術の開示に基づく場合にのみ受け入れられるところ、PTABは専門家証人による推定を受け入れない十分な理由を有していた。また、証拠は全体としてPTABの事実認定を合理的に支持しているから、CAFCは証拠を再評価しない。

PCT出願の無効資料能力について、CAFCは、専門家証人ではなく明細書の記載を優先している。本件は、「外部証拠(extrinsic evidence)よりも内部証拠(intrinsic evidence)を優先する」という判例にしたがった事案である。