CAFC判決

CAFC判決

Maxell, Ltd. 対Amperex Technology Ltd. 事件

CAFC No. 2023-1194 (March 6, 2024)

本件では、特定のクレーム要素が必須要素であることを示す限定と任意要素であることを示す限定の双方がクレームに含まれていた。地裁はクレームの限定に矛盾があるという理由でクレームが「不明確」(indefinite)と判断したが、この判決でCAFCは、地裁の判断を覆し、改めてクレーム解釈するように事件を差し戻した。

特定のクレーム要素が必須要素であることを示す限定と任意要素であることを示す限定の双方がクレームに含まれている場合の明確性について争われた事件

Maxell(原告)は、充電式リチウム電池に関する特許(9,077,035)を保有する。035特許のクレームには、陽極(positive electrode)が、異なる粒径の、リチウムを含む少なくとも2種の遷移金属酸化物から成る旨の記載があり、遷移元素として、コバルト、ニッケル、マンガンのいずれか一つを含むとの記載がある。

リチウム電池を製造するAmperex(被告)は2021年、035特許の非侵害の確認を求める訴訟をニュージャージー州連邦地裁に提起した。それを受けてMaxellはテキサス州西部地区連邦地裁にAmperexを相手取り、侵害訴訟を提起した。Amperexによる確認訴訟はテキサス州西部地区連邦地裁に移送され、両件は併合審理された。地裁は、あるwherein clauseでコバルトが選択可能な候補元素であると記載されているのに対し、別のwherein clauseではコバルトが必須元素として記載されているので、通常の用語解釈に従えばそれは矛盾した記載であり、クレームは不明確であるとして特許無効を判決した。Maxellはこの判決を不服としてCAFCに控訴した。

控訴裁は地裁判決を破棄・差戻し、その理由を下記のように述べた。問題とされた2つのwherein clausesの1つ目は、「遷移元素がコバルト、ニッケル、マンガンの少なくとも1つである」というもの。2つ目は、「遷移元素中のコバルト含有量は、モル比30~100%である」というもの。これらの二つの限定を満足する遷移元素が存在するので、二つの限定が矛盾するという解釈は正しくない。二つ目の限定は、遷移元素の主成分としてニッケルを開示する公知例を回避するために審査の過程で追加されたものであり、それ自体でクレームを無効にする程のものではない。地裁は、限定に矛盾があるという理由でもってクレームを「不明確」(indefinite)としているので、その判断を破棄し、再審理のために差戻す。