CAFC判決

CAFC判決

Litecubes 対 Northern Light Productions (GlowProducts)事件

Nos. 2007-1223, 2008 WL 834402,2008,7,31-Mar-08

本事件は、FOB輸入に関し、輸出者に対する事物管轄権を合衆国裁判所が有するか否かが問題となった事件です。FOB輸入の場合、出荷国で製品の所有権が輸入者に移転するため、輸出者が米国内へ輸入していると評価できるかが問題となりましたが、CAFCは合衆国裁判所が事物管轄権を有すると判断しました。

FOB輸入における輸出者に対する事物管轄権

ライトキューブズ(Litecubes, LLC)対 ノーザン・ライト(Northern Light Products, Inc. =GlowProducts) 事件において、CAFCは、事物管轄権の欠如を理由とする被告の棄却請求を地方裁判所が認めなかったことを支持する判決を下した。

しかし、侵害被疑品が、事物管轄権の問題に影響するものとして米国に輸入されたかどうかの争点の扱いを、地方裁判所も被告も誤っていたと指摘した。

ライトキューブズは、人工光源のアイスキューブに関する特許のライセンシーである。

グロウプロダクツ(GlowProducts)は、LEDを内臓した人工アイスキューブを中国の製造者から輸入し、米国内の顧客に販売していたカナダの企業である。

グロウプロダクツは米国内にオフィス・施設・資産のいずれも持っていない。事実審裁判所がグロウプロダクツはライトキューブの特許を故意に侵害していると判断した後で、グロウプロダクツは、事物管轄権の欠如を理由に訴えの却下請求を提出した。

グロウプロダクツは、販売はカナダで行われており、製品は「本船渡し条件」(FOB)で米国向けに出荷されているから、製品を輸入・販売しているのはグロウプロダクツ自身ではなく、グロウプロダクツの米国内の顧客であると主張した。

合衆国商法の下では、「FOB積出地」という文言は一般的に、売主が商品を輸送業者に委ねる費用とリスクを負うことを意味し、その時点で所有権は購入者に移転する。

地方裁判所はグロウプロダクツの申立を認めず、グロウプロダクツは少なくとも侵害被疑品を米国内に輸入していたと認定した。そうであれば米国連邦裁判所における事物管轄権の成立には十分である。

米国内では、連邦裁判所は特許法に基づいて生じた民事訴訟の第一審管轄権を持っている。「十分な訴答のルール」として知られるルールの下では、訴状が連邦法に基づく訴因を述べているか、原告の救済方法が連邦法の実質的問題の解決にかかっている場合に、連邦裁判所の事物管轄権が存在する。(Christianson 対 Colt Indus. Operating Corp. 事件486 U.S. 800,808 (1988)参照)

控訴審においてグロウプロダクツは、グロウプロダクツが米国内で製品を輸入・販売もしくは販売申込みをした証拠がないということは、連邦裁判所の事物管轄権を排除するものであると主張した。

グロウプロダクツは、自社が米国内に侵害被疑品を輸入したという地方裁判所の認定に対して争った。CAFCはその分析においてまず、米国内での侵害品の輸入または販売が単純に、最終的な特許侵害認定に必要な事実要素であるか否かという問題について審理した。この問題は連邦裁判所の事物管轄権に影響しない。

CAFCは、ライトキューブが、十分な訴答のルールに基づく事物管轄権の条件を満たしていたと認定して、次の様に判示した。

「米国特許法第271条違反を主張することにより、ライトキューブは連邦民事訴訟規則第1331条及び第1338条に基づく連邦問題裁判権を適切に発動させた。この裁判権は、ライトキューブが本案に関し、訴状の中で主張した特許侵害の要素の全てを立証することの成否に依存するものではない。」

CAFCは最高裁による明瞭なルールを次のように繰り返し述べた。

「もし、議会が制定法の範囲の限界値を管轄権有りと見なすと明瞭に述べるならば、裁判所及び訴訟当事者は正式に指示されるであろう。(中略)しかし、連邦議会が制定法上の限界を管轄権のある範囲として位置付けなかった場合は、裁判所はその限定を性質上、管轄権の無いものとして扱うべきである。Arbaugh 対 Y & H Corp. 事件、546 U.S. 500, 516 (2006) 」

米国特許法第271条は、米国内で侵害行為が生じることに管轄権の要件があるとは明記していないので、十分な訴答による提訴は、連邦裁判所の事物管轄権を与えるに十分である。

CAFCは、特定の連邦法の治外法権範囲の問題を、事物管轄権の要件に合成する、という誤った司法手続に対して注意を促した。

しかしながら、CAFCは、個人の侵害行為が米国内で生じたか否かを判断することが、連邦裁判所が侵害被疑者に対する対人管轄権を持つかどうかを決定する上で、なお重要であると指摘した。

CAFCはさらに、所有権がカナダ国内で移転しているので、米国内では販売していない、というグロウプロダクツの主張を検討する裁量権を行使した。

CAFCは、販売行為の場所を決定する上で、FOB発送のような明瞭なルールの使用を認めなかった。その代わりに、販売行為の場所を決定するための、当事者に対する対人管轄権が裁判所にあるか否かを判断した判例を適用した。North American Philips corp. 対 American Vending Sales, Inc. 事件 35 F.3d 1576, 1579 (1994)

この判例は、契約法に注目し、対人管轄権の判断をする上で、契約の場所及び契約行使の場所を考慮することを認めている。

CAFCは、本件では契約の場所も契約に基づき実行された場所も共に、議論の余地無く米国内であると認定した。なぜならば、米国企業が侵害被疑品の契約をし、製品が直接米国向けに輸送されたからである。

CAFCが販売の場所の判断において「対人管轄権事件」に依拠したことは、裁判所が侵害被疑者への対人管轄権有りと認定するならば、「販売または販売申込」は米国内で行われたと認定することを示唆している。

CAFCのライトキューブ判決は、特許侵害した被告が、その活動が主に米国外であることだけを理由に、米国地方裁判所の事物管轄権に異議を唱えることはできないことを明らかにした。

しかしながら、このような被告は、提訴された侵害行為の全てが外国で生じた場合には、今後も積極的抗弁をするであろう。