CAFC判決

CAFC判決

LifeScan Scotland, Ltd. 対 Shasta Technologies, LLC 事件

No. 2013-1271,2014,1,4-Nov-13

方法特許を実施する製品の譲渡がその特許権の消尽を導くことを認定した判決,この判決において、CAFCは、方法特許を実施する製品が譲渡されたため、特許権が消尽したことを理由に、その譲渡が無償の贈与であったにも拘わらず地方裁判所の間接侵害の仮差し止め命令を覆した。

方法特許を実施する製品の譲渡がその特許権の消尽を導くことを認定した判決

被告Shasta Technologies, LLCとConductive Technologies, Inc.とInstacare Corp.およびPharmatech Solutions, Inc.(まとめて「シャスタ」)は、原告LifeScan Scotland, Ltd.およびLifeScan, Inc.(まとめて「ライフスキャン」)に有利な合衆国連邦カリフォルニア北地区地方裁判所が下した仮差し止め命令に対して控訴した。

地裁の仮差し止め命令は、シャスタに対して、ライフスキャンのOneTouch Ultra血糖測定器で使用する血糖測定ストリップの製造、使用、及び販売を禁じた。命令を下す際に地裁は、血糖測定ストリップを販売するシャスタの行為は、ライフスキャンのUS特許第7,250,105号(105特許)に対する間接侵害の可能性があると判断した。

ライフスキャンのOneTouch Ultra血糖監視システムは、糖尿病患者個人が使用するもので、健全な血糖値の維持を支援する。このシステムは、血糖測定器及び使い捨ての測定ストリップを含む。

測定ストリップは、ストリップに載せる血液内の電流を測定するための電極を備える。測定ストリップからの電流入力に基づいて、血糖測定器は使い捨て測定ストリップ上の血液の血糖含量を測定する。

105特許の方法クレームは、グルコース測定器での測定ストリップの使用を対象とする。ライフスキャンはOneTouch Ultra血糖測定器を原価以下で販売または無料配布し、使い捨ての測定ストリップの販売から利益を得ていた。

シャスタは血糖測定器を販売していなかったが、ライフスキャンのOneTouch Ultra測定器用に設計された「GenStrip」測定ストリップを販売することにより、測定ストリップ市場においてライフスキャンと競争していた。

ライフスキャンは誘導侵害および間接侵害でシャスタを提訴し、シャスタのGenStripの販売を止めようと仮差し止め命令を求めたが、シャスタは、ライフスキャンのOneTouch Ultra測定器の販売および配布の結果として、105特許に係るライフスキャンの権利は消尽したと主張した。

地方裁判所は、ライフスキャンの仮差し止め命令の申し立てを承諾し、無料配布した製品に関してライフスキャンの特許権利は消尽していないと認定し、更に、特許権消尽は、特許方法を実施するために使用される製品と引き換えに特許権者が対価を受け取る場合にのみ適用し得ると述べた。

なお、特許による方法は測定器及びストリップのシステム全体の使用を要件とするため、測定器のみでは105特許の発明特徴が実施されないので、販売したOneTouch測定器に関してライフスキャンの特許権消尽はないと述べた。シャスタは地裁の判決をCAFCに控訴した。

控訴審において、シャスタは再び特許権消尽を主張し、一方ライフスキャンはOneTouch測定器の配布は消尽を起こさないと主張した。ライフスキャンは、測定器は105特許の方法クレームを実質的に実施していないと述べ、また、合理的な非侵害用途を有すると強く主張した。

なお、ライフスキャンは、測定器を無料配布し、特許に対する「利益」を得ていないため、消尽論は不適切だと主張した。

CAFCは地裁の判決を覆し、シャスタの消尽抗弁を認めた。CAFCは、方法クレームの発明概念は、測定器により「制御」および「実施」されるため、105特許の方法クレームの発明概念は、測定ストリップではなく血糖測定器に存在すると判断した。

CAFCはさらに、キューリグ判決に基づき、争点の用途が特許発明に期待される用途であることを理由に、合理的な非侵害用途を有するとのライフスキャンの主張を却下した。

なお、CAFCは、105特許の審査経過に、測定ストリップのみを対象にしたクレームが拒絶されたことに留意した。従ってCAFCは、合衆国連邦最高裁判決Quanta Computer, Inc.対LG Electronics, Inc., 553 U.S. 617 (2008)を根拠に、OneTouch測定器の配布は105特許の方法クレームを消尽するとの結論を出した。

CAFCは、この事件において特許消尽の抗弁を却下するとしたら、ストリップ自体が特許されていなくても、ライフスキャンは血糖ストリップの販売に関する競争相手を排除することができるようなる、と意見を述べた。

さらに、CAFCは、ライフスキャンの測定器の販売で対価を受け取っていないことは、特許消尽の抗弁を除外しないと述べた。CAFCは、ライフスキャンの測定器の販売での対価の欠如は、消尽論の適用を除外しないと強調した。

この認定の裏付けとして、CAFCは権利移転における動産の譲渡に対する制限に関する英国 コモン・ローの原則に着目し、譲渡が贈与もしくは販売であったかとは無関係に、このような制限は禁じられていると認定した。

CAFCはさらに、特許消尽は、「贈与」にも適用される結論の裏付けとして、米国著作権法の権利消尽論を参照した。CAFCは、特許権者が無条件で製品を譲渡した場合、後からその譲渡によって不適切な利益が与えられたから特許消尽は適しないと不満を言うことはできないと警告した。

レイナ判事は、この意見に反対し、特許の方法の本質的な特徴は測定ストリップにより実現され、結果として、測定器の販売は特許の方法の消尽をし得ないと強く主張し、多数判決は、製品の特許性と、製品が特許の方法の本質的な特徴を実現する能力とを、一緒にしてしまっているとコメントした。

ライフスキャンの判決は、特許消尽論の範囲に関する重要な指標を提供する。特許消尽論は、特許権者からの最初の譲渡の後の、製品の使用や譲渡が契約を必要とすることなく、かつ制約されないことを保護する法理である。

ライセンス等の当事者の権利を定義する契約関係がない場合、特許製品の譲渡は、特許された方法を含めて、その製品に関する特許権利を全て消尽させる可能性が高い。

Key Point?この判決において、CAFCは、方法特許を実施する製品が譲渡されたため、特許権が消尽したことを理由に、その譲渡が無償の贈与であったにも拘わらず地方裁判所の間接侵害の仮差し止め命令を覆した。