CAFC判決

CAFC判決

Lexmark International, Inc. 対 Impression Products, Inc. 事件

Nos. 2014-1617, 2014-1619,2016,4,Fed. Cir. February 12, 2016

この判決においてCAFC大法廷は先の判決を再度追認し、(1)販売者は自身の特許権を製品の再販および再利用を阻止する目的で使用可能であり、(2)外国向製品の販売許諾はその製品に関する米国特許権を消尽させないと判示した。この判決は、外国での取引と国内市場とでは米国特許法で異なる扱いとなることを注意喚起している。外国で購入された製品、あるいは使用/再販制限のある製品に基づく非消尽論により、潜在的な特許侵害が発覚することを防ぐよう注意を払うべきであろう。

過去の最高裁およびCAFC判決の2つを考慮して特許消尽論が及ぶ範囲を判断した大法廷判決

レックスマーク(Lexmark International, Inc.)はプリンターカートリッジとその使用に関する幾つかの特許権者である。本件の争点となるカートリッジを、当初米国内および外国向け共にレックスマークが販売していた。

外国で販売されたカートリッジ数種、および全ての米国内で販売された争点のカートリッジは、使い捨て(1回限りの使用)、かつ再販禁止の制限付きで、外国用カートリッジの米国内への再輸入を禁止する条件で値引き販売されていた。

インプレッション(Impression Products, Inc.)は、使い捨て、かつ再販禁止の制限に違反してサードパーティが再利用可能に物理的に改造した上記カートリッジを多数購入した。インプレッションは改造カートリッジを米国内へ輸入し、販売した。

地方裁判所での裁判で、インプレッションは、レックスマークによるカートリッジの最初の販売により米国特許権は消尽していたという理由のみに基づき、特許権侵害の主張に対して反論した。

インプレッションは、特許権の消尽なしとの認定の裏付けとなる過去のCAFC判決は、最新の最高裁判決であるQuanta Comput-er, Inc.対LG Electronics, Inc.事件(No. 553 U.S. 617 (2008))により、もはや適切な判例ではないと主張した。

地方裁判所は、レックスマークによる最初の販売は権原が与えられており、かつ、制限は課されていなかったことから、販売後の再利用および再販による使用をレックスマークが制限しても特許権の消尽は免れないと判示し、国内販売されたカートリッジに関するレックスマークの特許権侵害の主張を却下するよう求めたインプレッションの申立てを認める判決を下した。

一方で地方裁判所は、特許製品の外国での販売を最初に許可したことにより製品に対する米国特許権が消尽することはないと判示し、レックスマークの外国で販売されたカートリッジに関する特許権侵害の主張を却下するよう求めたインプレッションの申立てを拒絶した。両者は控訴し、CAFCはこの事件を自発的に大法廷で扱った。

CAFC大法廷は先の判決を再度追認し、(1)販売者は自身の特許権を製品の再販および再利用を阻止する目的で使用することができ(Mallinckrodt, Inc. v. Medipart, Inc., 976 F.2d 700 (Fed. Cir. 1992))、(2)外国向製品の販売の許諾はその製品に関する米国特許を消尽させない(Jazz Photo Corp. v. Interna-tional Trade Comm’n, 264 F.3d 1094 (Fed. Cir. 2001))と判示した。

CAFCは、特許権者が購入者に対し使い捨て/再販禁止の制限を法的に明確に通知した特許製品を販売する場合、明確に否定されたはずの再販もしくは再利用権限を、その販売により特許権者が購入者に与えるものではないと述べた。

そのような再販または再利用は、使い捨て/再販禁止の制限とは対照的に許諾されていないので、従って、それは侵害行為である。CAFCは、上記最高裁判例の下では、特許権者が特許製品を製造・販売する他者へライセンスする際に、そのような制限により特許権を維持することができると述べた。

CAFCによると、Mallinckrodt判決は、特許権者自身が同様に特許製品を製造・販売することができることを否定する何ら明確な法的根拠はないと判示していた。

CAFCは、Quanta事件の最高裁判決の後もMallinckrodt判決はなお有効な判決であると判断したが、その理由として、最高裁判決は特許権者の制限付き販売を扱った事件ではなく、特許権者からのライセンス許諾を有する別の製造者による販売が、無制限の販売権限を与えることになるかを扱った事件であったことを述べた。

外国での販売に関し、CAFCは、米国特許権者が単に米国特許製品を外国で販売もしくは販売を許可することによって、購入者に対し製品を米国内向けに販売・使用することが許諾されるものではないとの見解を示した。

Jazz Photo判決の非消尽ルールは、特許権者の販売はその製品を販売することにより権利を消尽するという推定がある上での、外国主権コントロール下での外国市場と米国コントロール下での米国市場との違いを認識している。購入者は特許侵害の抗弁として外国での販売に依拠することはできるが、それは明示的あるいは黙示的ライセンスが立証された場合のみであるとCAFCは述べた。

CAFCはJazz Photo判決をKirtsaeng v. John Wiley & Sons, Inc.事件(133 S. Ct. 1351 (2013))の判決と比較した。Kirtsaeng判決において最高裁は、著作権保護された製品の所有者は、著作権者の許可なしに特定の行為をすることができると判示したのである。

CAFCはこの判例法に対応する特許法は存在しないと述べて、外国での販売が他方で侵害となる国内行為に関わる権限を与えることと見なされるべきか否かについて、Kirtsaeng判決は言及していないと述べた。

国内での再販/再利用の制限に関し、CAFCは、梱包なしの販売は、再販または再利用の制限を受けないと推定されると判断した。しかしながら、もし制限があるとするならば、特許権者と何の契約もしくは関係性のないその後の所有者を製品と結び付け、法的に拘束することになるであろうと述べた。

ダイク(Dyk)判事はヒューズ(Hughes)判事と共に反対意見を述べ、Mallinckrodt判決は判決時点で誤りであり、Quanta事件における最高裁判決といずれにせよ調和しないと主張した。

ダイク判事は、CAFCが最高裁による明確な国内消尽ルールに従わなかったことは、最高裁の下級裁判所としての役割を逸脱していたと述べた。ダイク判事はまた、外国での販売は、権原ある販売者が米国特許権を留保することを明示しない限り、米国特許権は消尽すると推定されると主張した。

Key Point?この判決においてCAFC大法廷は先の判決を再度追認し、(1)販売者は自身の特許権を製品の再販および再利用を阻止する目的で使用可能であり、(2)外国向製品の販売許諾はその製品に関する米国特許権を消尽させないと判示した。この判決は、外国での取引と国内市場とでは米国特許法で異なる扱いとなることを注意喚起している。外国で購入された製品、あるいは使用/再販制限のある製品に基づく非消尽論により、潜在的な特許侵害が発覚することを防ぐよう注意を払うべきであろう。