CAFC判決

CAFC判決

Koito Manufacture 対 Turn-Key-Tech.事件

2005,2,2004年8月23日 CAFC判決

この事件のポイントは、「特許が先行技術引用例と同一、もしくは自明であることを理由に無効であることを立証する責任」は被告にあることを明らかにしている所にあります。

新規性・自明性による特許無効の立証責任

2004年8月23日、CAFCはTurn-Key-Tech, LLC 及び Jens Ole Sorenson(合わせて”Turn-Key”)と、Koito Manufacturing Co., Ltd. 及び North America Lighting, Inc.(合わせて”Koito”)からの争点に対する判決を下した。

Turn-Keyは、新公判の申し立ての却下、及び

米国特許第5,045,268号(以下、268特許)のクレームは新規性がなく、自明であるため無効である?Koitoの製造するテールライトは268特許を侵害していない

という陪審による認定に関する地方裁判所の法律問題としての判決に対して控訴した。

一方Koitoは、実地可能性の欠如、記載要件不備、訂正証明書での新規事項追加により‘268特許の全クレームが無効であるとした陪審の認定を覆し、法律問題としての判決を求めるTurn-Keyの申し立てを地方裁判所が部分的に認めたことに対し交差控訴した。

本件で問題となっているクレームは、薄いプラスティックの層を積み重ねることにより射出成形プラスティックを強化する方法に関するものであった。Koitoは射出成形技術を用いて作られるレンズを含むテールライトを製造していた。

控訴審においてTurn-Keyは、陪審による非侵害の認定を地方裁判所が支持するにあたり、”flow record”及び”predetermined general direction”という文言のクレーム解釈を変更したと主張したが、CAFCはこの主張を拒絶した。

“predetermined general direction”という文言について、CAFCは、Turn-Keyがこの文言のクレーム解釈を論議することはできず、よって地方裁判所の解釈に異議を唱えることはできないと判示した。さらに、CAFCはKoitoの使用している射出成形方法がその限定要件を満たさないことを示す十分な証拠を提示したと論じた。

Turn-Keyはさらに、Koitoは、提出した他の証拠だけでなく、268特許のクレームが日本国特許公開番号第148,082号(以下、JP 082引用例)と同一、もしくは自明であったことを示す明らかで強力な証拠を提示しなかったと主張した。

KoitoはJP 082引用例を証拠に加えていたが、その引用例がどのように268特許の全ての限定に合致するか、あるいは、その引例によって当業者がクレームされた発明を実施することが可能になるかといったことを示す専門家証言もしくは証拠を提示していなかったとTurn-Keyは主張した。

CAFCはTurn-Keyの主張に同意し、KoitoはJP 082引用例が268特許と同一であり、268特許が自明となるかを明瞭に供述しなかったと判示した。

しかしながら、CAFCは、Koitoによって挙げられた他の全ての証拠は新規性あるいは自明性の立証には不十分であったとは結論付けなかった。

こうしてCAFCは、地方裁判所に対し、全ての裁判における証言とKoitoによって提出された証拠を再度検証し、Koitoの新規性及び自明性の争点に関する主張が裏付けられるかを認定するよう指示し、裁判を差し戻した。

交差控訴において、Koitoは268特許は(1)新規事項の追加、(2)明細書記載要件の欠如、(3)実施可能要件の欠如を理由に無効であると主張した。

CAFCはこれらの主張を全て却下した。新規事項追加に関しては、CAFCは補正事項は出願時の明細書に潜在的に含まれていたと理由付けした。明細書記載要件の主張については、CAFCは明細書の記述は「文言、文章の構成、図面、図表、数式等」によって要件を満たされる。

しかるに、268特許の図面は、発明者がこの要件を十分に満たす発明をクレームできたことを示すものである(Lockwood v. Am. Arilines, Inc., 107 F.3d 1565, 1572 (Fed.Cir. 1997)。

実施可能要件の争点に関しては、CAFCは、その証拠が、争点のパラメーターがその産業において標準であったことを立証しており、当業者であればその発明を実施するために追加の詳細な情報を必要としなかったことを明示していたと理由付けた。

この事件は、特許が先行技術引用例と同一、もしくは自明であることを理由に無効であることを立証する責任が被告にあることを明らかにした点で興味深い。