本件は、薬品または動物用生物学的製剤の開発、及び連邦法に基づいてFDA認可申請することに、合理的に関連している特許発明の使用は、特許法第271条(e)(1)に基づくFDA例外規定により侵害認定を免れることを明らかにした事件です。
FDA申請に関連する特許発明の使用と271条(e)(1)による免責が適用される範囲との関係について取り扱った事件
インテグラ(Integra)事件は、最善の候補薬を決定し、選択された候補薬の商業的開発を進める目的で行われた実験が、特許法第271条(e)(1)に定められている免責事項によって保護されるか否かという問題について焦点を当てた。
特許法第271条(e)(1)には次のように記述されている。
「医薬品、または獣医用生物製品の生産、使用、または販売を規制する連邦法の下での開発、および情報提出に関連していると適切に認められる使用のためのみに、(中略)特許発明を生産、使用、販売申込み、米国内で販売、もしくは米国内向けに輸入することは、侵害行為ではない。 」
前判決においてCAFCは、被告の実験はFDAに情報を提出するための臨床試験ではなく、第271条(e)(1)の免責によって保護されないという地方裁判所の判決を支持した。最高裁はサーシオレイライ(裁量上訴)を認め、その調査結果がFDA提出物に完全には含まれていない前臨床調査における特許発明の使用が、第271条(e)(1)による特許侵害の免責となるか否かという争点を構成した。
最高裁は、第271条(e)(1)によれば、FDA提出用の開発情報のプロセスに「合理的に関連している」特許化合物のあらゆる使用は、侵害とは認められないと判示し、「合理的に関連している」とは「候補薬の生物学的メカニズム及び生理学的効果が認識された後で行われた調査における特許発明の使用」を包含すると説明した。法律的解釈の観点から控訴審を再審理すべく、事件はCAFCへ差し戻されたのである。
差戻し審においてCAFCは、メルク(Merck)の実験はインテグラ特許を侵害していないと判示し、異なる判決を下した。
CAFCは、最高裁によれば、FDA申請に含まれていない作業は、FDAによる例外の対象外であるとしたインテグラの主張は認められない、と結論付けた。
最高裁は、薬品に対するFDAの認可を得るために、どの種類の情報が必要であるかについては、常に明瞭なわけではないとの見解を示したとCAFCは述べた。
CAFCは更に、地方裁判所の手続における陪審員は不正確な情報を与えられていたと判示した。インテグラは陪審員に対し、FDAの唯一の関心は安全性であり、有効性や作用は重要ではない、と伝えていた。
さらに、陪審員に対し、特許法271条(e)(1)の免責は、臨床試験を申し込んだ製品の最終選考後に適用されると伝えていた。最高裁はこれらの主張を却下した。したがって、記録全体の再調査に基づき、CAFCはメルクの主張を認める法律問題としての判決を下したのである。
また、CAFCは、新たな発見のないお決まりの実験だけが271条(e)(1)によって免責される、というインテグラの別の主張も却下した。
最高裁は、この差異は重要ではなく、免責は、生物学的特徴と生理学上の効果の境界が既に候補薬において認識できるか否かによると認定した。
本件では、提訴の対象となった実験の全ては、生物学的及び生理学的特徴の発見後に行われていた。さらに、問題の実験が科学的理解に加えられたという事実も、271条(e)(1)の免責を無効にするものではない、と認定した。
最後に、合議体の多数意見では、最高裁及び全ての当事者は、本件が研究室において使用される細胞株のような道具である「リサーチツール」とは関係ないことに同意したと述べた。
多数意見の判決は過剰に拡張的であるとの反対意見もあったが、最高裁は、本件をリサーチツールとは関係ないものであり、CAFCによる解決は最高裁の指令外のものである、と規定したことから、多数意見はこのように結論付けた。
インテグラ事件は271条(e)(1)の免責を拡張した点で興味深い。裁判所はこの事件により、ある事件においてFDA申請に合理的に関連しているが、その申請の現実的主題ではない研究に対し、免責を認め非侵害の判決を下す可能性がある。