CAFC判決

CAFC判決

Grober 対 Mako Products, Inc. 事件

Nos. 2010-1519, -1527,2012,10,30-Jul-12

この事件の判決は、出願人が「明確かつ明白な否認」を行った場合にのみ、審査中に述べた意見がクレーム範囲を限定することに焦点を当てています。裁判所または侵害被疑者が、特許発明の技術的範囲を限定的に解釈するためには、審査中のあいまいな否定意見は根拠として不十分であることが明らかになりました。

この事件で、CAFCは地方裁判所のクレーム解釈および非侵害の略式判決を破棄した。

グローバー(Grober)氏は動画撮影に用いられるカメラ用の安定化装置に関する特許権を所有していた。特許発明は、波、流れ、風のような力によって生じる動きを補償する発明である。2004年10月に、グローバー氏はマコヘッド(MakoHead)と呼ばれる動画安定化装置が自身の特許権を侵害していると主張して複数の被告を訴えた。

被告が当事者系再審査を請求しため、地方裁判所はこの訴えの審理を中止した。2006年に、地方裁判所は中止を解除し、「ペイロード・プラットフォーム」というクレームの文言を解釈した。

控訴審での主な争点は、地方裁判所による「ペイロード・プラットフォーム」という用語の解釈についてであった。グローバー氏が再審査中に行った意見により、地方裁判所はこの用語を装置(例えば、カメラ)が搭載される2次元の「水平面」に限定して解釈した。

プロセキューション・ディスクレーマーの法理の下で、特許権者が審査中に明確かつ明白な範囲の否認を行った場合にクレームの技術的範囲は狭くなりうるとCAFCは述べた。しかし、審査中の行為および意見が曖昧な場合にプロセキューション・ディスクレーマーは働かない。

地方裁判所は、再審査中に提出された2つの意見がペイロード・プラットフォームの範囲を水平面に限定することを肯定していると判断した。最初の意見で、グローバー氏は2つの先行特許発明に対して、これらの特許発明には所定のコンポーネントがペイロード・プラットフォームに「固定」または「搭載」されることが開示されていないと意見することによって差別化を図った。

CAFCは地方裁判所に同意せず、これらの意見は(プラットフォームに関するコンポーネントを記載するものであって、)ペイロード・プラットフォームの特徴を記載するものではないと判断した。したがって、CAFCは再審査のこれらの意見は「ペイロード・プラットフォーム」という用語の範囲を2次元の水平面に限定するものではないと結論付けた。

2番目の意見で、グローバー氏は再審査請求人によって提示された反論に対応した。先行技術に対する差別化において、グローバー氏は再審査請求人の立場を述べたが、これらの反論が自身の発明の正確な記載として受け取られないように注意を払った。

CAFCは、地方裁判所がグローバー氏の記載した請求人の立場をクローバー氏自身の立場とみなしたのは不適切であったと判断した。CAFCは、グローバー氏の意見が先行技術の特徴に関連し、クレームの「ペイロード・プラットフォーム」の意味を限定するものではないと判断した。

CAFCは地方裁判所のクレーム解釈を破棄し、「ペイロード・プラットフォーム」を「ペイロード(例えば、カメラ)が直接に搭載されまたは取り付けられた3次元構造体」を意味すると解釈した。

CAFCは地方裁判所の非侵害の認定を破棄した。地方裁判所は裁量で略式判決を下す権限を有するが、(1)地方裁判所が特許クレームと侵害被疑装置との対比を行わず、(2)一部のクレームは地方裁判所の非侵害の判決の根底となる「ペイロード・プラットフォーム」要件を含んですらいないという理由で、CAFCは地方裁判所が非侵害の判決を行ったのは誤りであったと述べた。

CAFCは地方裁判所が適切なクレーム解釈の下で侵害の争点に十分に対処すべきであったと説明して、事件を差し戻した。

この事件の判決は、出願人が「明確かつ明白な否認」を行った場合にのみ、審査中に行われた意見がクレーム範囲を限定することに焦点を当てたものである。この判決は、クレームの範囲を制限するためには、審査中に行われた否定意見は曖昧であってはならないことを注意喚起している。

Key Point?この事件の判決は、出願人が「明確かつ明白な否認」を行った場合にのみ、審査中に述べた意見がクレーム範囲を限定することに焦点を当てている。すなわち、裁判所または侵害被疑者が、特許発明の技術的範囲を限定的に解釈するためには、審査中のあいまいな否定意見は根拠として不十分である。