CAFC判決

CAFC判決

Global-Tech Appliances, Inc. 対 SEB S.A.事件

No. 10-6,2011,8,31-May-11

この事件において最高裁は、教唆責任は、教唆の行為が侵害を構成することを実際に認識していたことを要件とすると判断しました。さらに、この認識要件は、侵害に関する重要事実に気付かないように、その事実から自らを意図的に遮断する「故意の無知」を立証することによって充足すると判決しました。

グローバルテック(Global-Tech)事件において、最高裁はCAFC判決を支持し、グローバルテックがセブ(SEB)の特許に対し、特許法第271条(b)に基づく侵害教唆の責任を負うと認定した陪審評決を支持した。これにより、最高裁は教唆責任の新たな基準を設けた。

セブは「クールタッチ」というフライ鍋技術に関する特許を1991年に取得した。1997年、サンビーム・プロダクツ(Sunbeam Products)は、香港に拠点を持つ電気機器メーカーであるペントアルファ(Pentalpha)にコンタクトし、セブのクールタッチに類似した仕様のフライ鍋の供給を依頼した。

サンビームの仕様に合わせるために、ペントアルファは香港でセブのフライ鍋を購入し、その表面的な特徴だけを全てコピーした。本質的にセブのフライ鍋の模造品を製作した後で、ペントアルファは特許調査を依頼したが、弁護士に対し、ペントアルファのフライ鍋のデザインがセブのフライ鍋を直接コピーしたものであることを伝えなかった。

弁護士はセブの特許を探し出せず、ペントアルファのフライ鍋は、検索したいずれの特許も侵害していないと述べた見解書を提示した。

その後まもなく、ペントアルファはサンビームに対し、コピーしたフライ鍋の供給を開始した。サンビームはそのフライ鍋をセブのフライ鍋より安く米国内の顧客に販売した。

1998年、セブはサンビームを特許侵害で提訴した。この事件が和解に至った後、セブは、ペントアルファがセブの特許を直接侵害し、サンビーム及び他の小売業者に特許法第271条(b)違反の侵害を積極的に教唆したと主張して、ペントアルファを提訴した。

陪審員が直接侵害及び侵害教唆の両方に基づく特許侵害を認定した後、ペントアルファは、侵害教唆の責任は、実際に侵害を認識していたことを要件とし、セブがサンビームを提訴するまで、セブの特許を知らなかったと主張して控訴した。

CAFCは、意図的な無関心(deliberate indifference)は、侵害教唆の認識要件を満たしていると判示してこの主張を退けた。

セブのデザインが特許付与されていたことをペントアルファが知っていたという直接的証拠はないが、「セブが特許を保有しているという既知の危険性をペントアルファが意図的に無視した」という証拠は十分ある(注1)。ペントアルファは上告し、最高裁は裁量上訴を認めた。

特許法第271条(b)に成文化された侵害教唆の原則に基づき、被告は「積極的に特許侵害を教唆した」ならば責任を負うべきと判断される。

特許法第271条(b)及び成文化されることを意図した判例法は、意思の問題に関しては曖昧であることを確認した後で、最高裁は最終的にペントアルファの主張を認め、教唆行為が特許侵害を構成することを認識していることが、教唆責任の要件となると判示した。

最高裁はこの結論に至る上で、第271条(c)に基づく寄与侵害を解釈した判例に依拠し、第271条(b)と第271条(c)が共通の起源を有し、類似した不明瞭な表現をしていることから同様に解釈されるべきであると判断した。

侵害教唆の責任が、潜在的な侵害を知っていたことを要件とすると結論付けた後で、最高裁は次に、CAFCが採用した意図的無関心の基準は包括的過ぎると判示した。刑法から引用して、最高裁は、被告による認識ある行為は、被告が故意に無知であること(willful blindness)を立証することによって成立するとした制定法の、長年にわたる法理を採用し、「被告は、状況から強く示唆された重要事実の明瞭な証拠から自らを意図的に遮断することによってこれらの制定法の適用を免れることはできない」と述べた(注2)。

故意に無知な状態の被告は、認識しながら侵害行為を行う者と等しく過失があり、重要事実に意図的に気付かないようにしていることを十分に分かっている者は、その事実を実際に知っているに等しいことを理由に、最高裁は「故意の無知」を認識要件に適用することを正当化した。

故意の無知の基準をペントアルファの行為に適用し、最高裁は、証拠は侵害教唆の認定を裏付けると判断した。特に最高裁は、ペントアルファは(1)外国市場で製造された製品には通常、米国特許の表示がないことを知りながらセブのフライ鍋の海外モデルをコピーし、(2)特許調査の際に弁護士にセブのモデルを直接コピーした事実を伝えなかったこと、また、ペントアルファの行為は、後の侵害訴訟における説得力のある反証に使おうとする試み以外の何物でもないことを述べた。

認識要件は意図的無関心によってではなく、故意の無知によってその要件を満たされるとしたGlobal-Tech事件における最高裁判決は、侵害教唆の主張における有責性の立証責任を非常に増大させた。この判決から、CAFCに委ねるのではなく、特許法の整備により積極的な役割を担おうとする最高裁の最近の傾向がうかがえる。

Key Point?この事件において最高裁は、教唆責任は、教唆の行為が侵害を構成することを実際に認識していたことを要件とすると判断した。さらに、この認識要件は、侵害に関する重要事実に気付かないように、その事実から自らを意図的に遮断する「故意の無知」を立証することによって充足すると判決した。