この事件において、CAFCは地方裁判所の認定を破棄し、陪審員の評決を覆すためにはかなり高いハードルを乗り越える必要があることを明らかにしました。また、CAFCはマーカッシュクレームに記載されたグループのうちひとつでも新規性を欠如していれば、クレーム全体が無効となることを認めました。
マーカッシュ形式で記載されたクレームにおける複数の選択肢の1つのみが先行技術文献に記載されている場合におけるクレームの新規性について
原告であるFresenius USA, Inc.とFresenius Medical Care Holding, Inc.(以下、まとめてフレゼニウス)は、Baxter International, Inc. 及び Baxter Healthcare Corporation(以下、まとめてバクスター)を相手取り、米国特許第5,247,434号(以下、434特許)、第5,744,027号(以下、027特許)及び第6,284,131号(以下、131特許)は無効であり、フレゼニウスの血液透析器(注1)はそれら特許権を侵害していないとする確認判決を求める訴訟を起こした。
バクスターは027特許のクレーム7、11、14~16、131特許のクレーム1~3、13~16、及び、434特許のクレーム26~31の特許権侵害を主張し、反訴した。
クレームの解釈を受けて、フレゼニウスは対象クレームの全てについて特許権が侵害されていると主張した。
陪審員は、027特許のクレーム7と14~16は新規性の欠如を理由として無効であり、また、主張された全てのクレームは非自明性の欠如を理由として無効であると判断した。しかし地方裁判所は、陪審員による自明性の評決を裏付けるような実質的証拠がなかったため、バクスターによる法律問題としての判決の申し立てを認めた。
損害賠償に関する審理の後、陪審員はバクスターに約1400万ドルの損害賠償額を認めた。そして、地方裁判所はフレゼニウスに対し製品の差止を命令し、差し止め以前の販売について、販売価格の10%の継続的な特許権使用料の支払いを命じた。
自明性に関して、クレーム7とクレーム11が自明であるという証拠をフレゼニウスが提出できなかったという地方裁判所の判断は誤りであったと、CAFCは認定した。
CAFCは、クレーム7の新規性の欠如を示す明確かつ説得力のある証拠をフレゼニウスが提出したという認定に同意しなかった。クレーム11の新規性と自明性の欠如の主張について、フレゼニウスが明確に関連付けてこれらを説明しなかったとはいえ、分別のある陪審員は、全ての要素が先行技術に存在しるため、自明性により無効であると判断することができていたとしたのである。
CAFCは、131特許に関しても地方裁判所には同意しなかった。地方裁判所は、フレゼニウスの専門家がマーカッシュクレーム(注2)として記載されたクレーム1の要素を検討しなかったと認定した。
このクレーム要素は、透析液循環装置と他の3つの選択肢からなる血液透析器へ透析液を運ぶことが可能なシステムのグループを包含する。CAFCはそのようなグループのうちひとつの要素が新規性を欠如している場合、クレーム全体も新規性を欠如していると言及した。血液循環器へ透析液を運ぶ透析循環装置の使用は、先行技術において周知であったとしたバクスターの専門家証言に基づき、CAFCは、陪審員の自明性の認定を裏付けていると認定した。
CAFCは、実質的証拠がクレーム14と16の無効性も裏付けていると判断した。
クレーム26から31に関して、ミーンズ・プラス・ファンクションの限定を含んでいるため無効であると判断するためには、構成と機能の両方が先行技術の中に存在することの立証が必要であるとCAFCは説明し、特許は有効であるとした法律問題としての判決を支持した。
フレゼニウスの証拠は、もっぱら機能の面についてのみ焦点が当てられており、証拠は法律問題としては不十分であった。
CAFCは、特許使用料の裁定及び差止命令は無効であると決定した。
フレゼニウスUSA事件におけるCAFCの判決は、陪審員による評決を審理する際にCAFCが用いる精査に関して教訓的である。CAFCは、言及されたグループのうちひとつでも先行技術に開示されていれば、マーカッシュタイプのクレームが無効になることを認めた。この判決は特許権者とその特許の有効性を争う者のどちらにも関連する。