この事件でCAFCは、審査時の補正でconsisting essentially of形式に書き換えられたクレームのPTABによる広い解釈(CAFC判例に準拠した解釈)を否定し、ブリモニジン以外の全ての活性物質を除く狭いクレームと解釈した。
審査経過に基づきconsisting essentially of形式のクレームを限定的に解釈した事件
Eye Therapies, LLC は、低濃度のbrimonidine(ブリモニジン)を使用した目の充血治療法に関する特許(8,293,742)の特許権者である。742特許の独立クレームは特定濃度のブリモニジンを投与する治療方法をクレームしている。742特許の審査時に審査官がbrinzolamideとブリモニジンの組み合わせを開示する先行特許(6,242,442)の拒絶理由に対し、出願人はcomprising形式からconsisting essentially of形式にクレームを補正した。出願人はその際、先行特許がbrinzolamideとブリモニジンの組み合わせであるのに対し、補正クレームはブリモニジン以外の活性物質を含める必要がないと審査官に回答した。審査官は出願人に回答内容を確認した上で補正クレームに特許を許可した。
Slayback Pharma, LLC は、742特許のクレーム1~6について特許庁(PTAB)にIPRを申請した。PTABは、無効理由として引用された先行特許から全ての対象クレームが自明であるとして特許無効の決定を下した。PTABはその理由を次のように説明した。
CAFC判例(AK Steel Corp. v. Sollac, 2003) によれば、発明の基本的かつ新規な物性に重要な影響を与えない限り、consisting essentially of のフレーズはクレームに記載されていない物質を含みうる。そうであればその発明は先行特許によって既に教示・示唆されており、当業者に対し先行特許と組み合わせることで発明が再現できるとの期待を持たせ得る自明な発明と認定した。
Eye TherapiesはこのPTABの決定に対してCAFCに控訴した。CAFCは、PTABのクレーム解釈が誤っているとして破棄・差し戻し、その理由をクレームの“consisting essentially of”は、審査経過から判断して、出願人が審査官にDean特許と区別するため「他の物質を含める必要がない」と説明した上で明細書にもその旨が記載されていることに鑑み、ブリモニジン以外の全ての活性物質を排除すると解釈すべきであると説示した。