CAFC判決

CAFC判決

Dewberry Group, Inc. 対 Dewberry Engineers Inc. 事件

Supreme Court, No. 23-900 (February 26, 2025)

この事件で最高裁は、確信犯的な赤字経営の侵害者に対する不当利得の返還請求に対し、商標侵害によってもたらされた利益を不当利得返還の対象にすることはできないとした。

両当事者は、社名に’Dewberry’を持つ無関係の不動産会社で、主に米国東南部の州で営業活動を行っている。Dewberry Engineers Inc.は登録商標‘Dewberry’をもち、2007年にDewberry Group Inc. (DGI)を商標侵害で訴えたが、結局、和解した。

和解から10年後、DGIは、主に個人が所有する不動産の賃貸物件の管理運営の代行サービスを開始した。Dewberryの商号がサービス提供者として関係資料に使用されていた。DGIと物件所有者の間の契約により、物件所有者の口座に賃貸料が振り込まれ、DGIには市場価格より明らかに安い定額のサービス料が支払われた。DGIの収支は常に赤字で、DGIのオーナーからの資金注入によってようやく事業が継続されていた。

Dewberry の商標権者は、DGIを連邦地裁に提訴して、商標権の侵害の認定と不当利得の返還をもとめた。地裁はDGIによるDewberry商標権侵害が故意かつ悪質であることを認めた。また、DGIの取引実態(economic reality)に鑑み、物件所有者をDGIと同一の法人とみなし、その賃貸料収入(これはかなりの額に上った)をGDIの売上げと合算し、その結果、約4300万ドルを返還すべき不当利得とした。事案は第4巡回区控訴裁に控訴され、控訴審は地裁判決を支持した。GDIは控訴裁判決を不服として連邦最高裁に上告した。

最高裁は、損害賠償額の算定の基礎となる被告の売上げに物件所有者の賃料収入を含めたのは誤りであるとして、控訴裁判決を破棄・差し戻した。最高裁はその理由を次のように述べた。Lanham Act(商標法)1117条(a)の下では訴状に記載された被告(本件ではGDI)の利益だけが考慮され、顧客の利益まで含めるのは明らかに誤りである。会社法の観点からも、たとえ顧客であっても、それが異なる法人(個人)である以上、判例では同一法人と見なすことを認めていない。取引実態によってそれを正当化することはできない。