本判決においてCAFCは、特許庁長官によるPTAB決定の再審理は、IPRの最終決定期限内に行われなければならないとの主張を斥けた。
IPRの決定を再審理するかどうかは、特許庁長官の裁量であることを確認したCAFC判決
被告のGoogleは、原告のCyWeeが保有する特許についてのIPRを2件申請した。PTABは2018年12月11日、申請された全クレームについてIPRの開始を決定した。IPRが開始されるとLGやHuaweiなどの訴外当事者がIPRに参加したため、PTABはIPRの決定期限を通常より1ヶ月延長して2020年1月10日に設定した。
PTABは延長期限最終日の1日前の1月9日、全クレームが自明を理由に特許無効であると決定した。CyWeeは、特許無効のPTAB決定を不服としてCAFCに控訴し、併せてPTABを構成する行政特許判事(APJ)の任命は連邦憲法に違反すると主張した。CAFCは、2件のIPRを併合し、PTABの無効決定を支持した。憲法違反の主張については、Arthrex事件でCAFCがその争点を斥けているとして、原告(CyWee)の主張を退ける命令(Mandate)を下した。しかし、CAFCの命令発行後間もなく、連邦最高裁がArthrex事件の上告審で特許庁長官がPTABの行政法判事(APJ)の決定を再検討できないのは憲法の任命条項(Appointments Clause)に違反すると判決した。この連邦最高裁判決後、原告(CyWee)は本件の命令の取消しと事件の特許庁への差戻しを求めるモーションをCAFCに提出した。CAFCはそれを認め、Cyweeに特許庁長官の再審理を求める機会を与える目的で、事件を特許庁に差し戻した。
再審理の請求を受けた特許庁長官は、再審理を認めず、PTABの審決を終局的なものとすることを決定した。原告は改めてCAFCに上訴し、特許法上、特許庁長官によるPTAB審決に対する再審理はIPR開始決定から1年以内に行われなければならないと主張した。CAFCは、この1年の期限は、法文上特許庁長官による再審理の期限は定められておらず、特許庁長官からの権限委譲を受けたPTABの審判官(APJ)は規則に従う期限内に審決を出しているのだから、原告の主張は失当であるとして、その主張を斥けた。
なお、CAFCは、別の事件(「CyWee Group Ltd.対Google LLC, et al事件」(2021年3月16日判決))で「IPR開始後に発見された引例にもとづく審理の停止を求める申立て(モーション)を退けたPTABの判断に誤りはない。そのような判断もPTABの最終的な決定でありそれを控訴で争うことはできない」と判決している。