CAFC判決

CAFC判決

Cozy Comfort Co. LLC対Top Brand Co.事件

CAFC, No. 2024-2191 (July 17, 2025)

この事件でCAFCは、意匠(デザイン)特許にも通常の技術特許と同様に審査経過禁反言を適用し、地裁によるデザイン特許侵害を認める判決を破棄した。

意匠特許に審査経過禁反言を適用し非侵害と認定した事件

Cozy Comfortはフード付パーカーの意匠特許(D859,788)と毛布カバーを指定商品とする2件の登録商標(THE COMFY)を保有する。D788特許の審査の過程でCozyは審査官が引用したWhite特許(D728,900)の拒絶理由を回避するため、D788特許の権利範囲を狭め、特定の特徴を放棄した。競合するTop Brand等がアリゾナ州連邦地裁にCozy ComfortのD788特許に侵害しないことの裁判所による確認を求める訴訟を起こしたため、Cozy Comfortは、Top Brand等によるデザイン特許と登録商標の侵害認定を求める反訴(陪審裁判)を、アリゾナ州地裁に起こした。

陪審はデザイン特許と登録商標の両方の侵害を認め、D788特許については1540万ドル、登録商標については308万ドルの損害賠償額を評決した。陪審評決後、Top Brand等は、この事案は、裁判官が法律問題として判断すべきであるとするモーション(JMOLモーション)を提出した。しかし、地裁はそのモーションを退け、陪審認定の通り判決した。

D788特許には審査経過禁反言が適用されるが、地裁の裁判官は陪審員に対する説示で審査経過禁反言の適用により権利範囲が限定されることを十分に説明していなかったため、裁判官の不作為が法律問題として提起されたものと思われる。

Cozy Comfortは地裁判決を不服としてCAFCに控訴した。CAFCは、デザイン特許についても通常特許と同様に審査経過禁反言の法理が適用されることを明らかにし、本件の場合、権利者であるCozyが審査の過程で拒絶理由を克服するために一部のクレームを権利放棄しているとして、地裁の判決を破棄しD788特許の非侵害を認定した。また、商標侵害については、陪審の評決が実体的な証拠によって支持されていなかったとして登録商標の非侵害を認定した。その上で、Top Brandには、デザイン特許の非侵害と登録商標2件の非侵害について、法律問題として裁判官に判断してもらう権利があるため、地裁においてJMOLモーションが認められなかったのは誤りであるとした。