CAFC判決

CAFC判決

Continental 対 Avanci他事件

5th Circuit, No. 20-11032,2022,2,28-Feb-22

自動車メーカーに部品を納入するサプライヤーは、自動車メーカーに対して特許保証をしている。従って、自分が特許ライセンス取得し自動車メーカーに対して免責義務を果たさなければならない。特許管理会社のライセンス拒絶によって、その義務を履行できなかったことを損害とする救済請求は、憲法で保障された「原告適格」の要件を満足するほど十分ではないとした。

コンチネンタルは、コネクテッドカーをモバイル環境に接続するための基幹部品(テレマティクス制御ユニット(TCL))を製造し、ダイムラーなどの自動車メーカーに供給していた。ノキア他の多数の企業は、標準化団体であるETSIやTIA(米国電気通信工業会)などが設定した携帯電話通信規格(2G, 3G, 4G)の必須特許(SEP)を多数保有しており、保有特許のライセンス契約を円滑に進めるため、特許プールを設立した。特許プールの管理・運営をAvanciが担当した。なお、プールされたSEPを一括してAvanciからライセンス受けることもできるし、個々のSEPについての個別ライセンスを、それぞれのSEP保有者から受けることもできる。

コンチネンタルは、プールされたSEPの一括ライセンスを求めたが、Avanciはそれを拒絶した。SEPの一括ライセンスは、自動車メーカー向けであることが拒絶の理由であった。コンチネンタルは、Avanciのライセンス拒絶がFRAND義務に違反し、反トラスト法に違反するとして、AvanciとSEP保有供会社をカリフォルニア北部地区連邦地裁に訴えた。(なお、コンチネンタルは、自動車メーカーに対する一括ライセンスが違法であるとは主張していない。) Avanci は事件のテキサス北部地区連邦地裁への移送を求め、それは認められた。移送先のテキサス地裁は、コンチネンタルの訴えを却下したため、コンチネンタルは地裁の却下判決を不服として第5巡回区控訴裁に控訴した。

第5控訴裁は、地裁の却下判決を破棄し、「コンチネンタルの原告適格の欠如にもとづき請求を棄却すべし」との意見書を付けて、事案を地裁に差し戻した。控訴裁はその理由として、コンチネンタルが根拠として主張した「自動車メーカーに対する免責義務」と「ライセンス拒絶」は、部品サプライヤーの憲法上の原告適格を認めるだけの具体性を有していない、と説明した。

(注:この判決は自動車業界におけるSEP関連判例である。争点は「原告適格」であるが、コネクテッドカーをめぐるSEP訴訟の幕開けと位置づけることができる。)