CAFC判決

CAFC判決

Clock Spring L.P. 対 Wrapmaster, Inc. et al.事件

No. 2008-1332,2009,6,25-Mar-09

この事件は実験的使用の例外の限定的適用を明瞭にしました。特許出願を目的とした発明の動作性能やクレームされた特徴を確認するためのテストでなければ、実験的使用とは認められません。

出願前に行ったデモンストレーションが実験的使用による例外の適用の対象となるか否かを判断した事件

クロックスプリング(Clock Spring)は、高圧ガスパイプの修理方法に関する米国特許第5,632,307号(以下、307特許)を所有している。クロックスプリングは307特許のクレームの侵害及び米国商標法第1125条(a)(1)(A)、ランハム法第43条(a)違反を主張し、ラップマスター(Wrapmaster)に対し訴訟を起こした。

略式判決において、テキサス州南部地区地方裁判所は307特許のクレームは自明性により無効であるため、ランハム法に基づく主張には実体がないとした。これに不服のクロックスプリングは控訴した。

CAFCの3名の判事からなる合議体は、先行する公然の使用を認め、地方裁判所の無効との略式判決及びランハム法に基づく主張には実体がないとした判決を支持した。

CAFCは、特許の基準日の3年前である1989年に行われたクロックスプリングのデモンストレーションは発明の公然の使用であったと認定したが、その認定の際に、CAFCは、(1)1989年のデモンストレーションは公的であり、(2)デモンストレーションはクレームの全ての限定に関連していて、(3)使用は実験的なものではなかったとした。

CAFCは、最初の2つの要因は記録によって容易に裏付けられるとした。実際、当事者は1989年のデモンストレーションが公的なものであったことについては争っていなかった。更に、クロックスプリングが3つを除くクレーム1の全ての限定は公的なデモンストレーションに関係していると主張する一方で、CAFCは307特許のクレーム1の全ての限定は1989年のデモンストレーションの一部であったと認定した。

CAFCは次に、1989年のデモンストレーションは実験的な使用であったか、先行する公然の使用ではなかったかどうかを分析した。CAFCが言及したように、実験的使用の例外は公然の使用制約と区別されたかけ離れた原則ではないとした(注1)。その代わり、他の公然の使用であるものは、それが実験的使用であるとされたら無効とはされない(注2)。

使用が実験的であるとされるのは、(1)発明のクレームされた特徴をテストする、もしくは(2)発明が意図された目的通りに動作するかどうか判断する場合に限り、それは特許性の要件でもある。

仮にクレームされた特徴や全体的な動作性能のテスト中であり、発明が未完成で特許を受けられる状態でない場合に、クレームされた特徴もしくは全体的な動作性能のどちらかが特許出願を目的としてテストされていない限り、そのようなテストは実験的使用ではない。CAFCは実験的使用の制約は、発明者に特許を取得する権利を失わせることなくテストを通して発明を完成させようとする場合にのみ存在すると再確認した。

この事件において、CAFCはクロックスプリングのデモンストレーションは実験的使用ではなかったと認定し、デモンストレーションの報告に明確な記述がなかったので、1989年のデモンストレーションは、発明が意図した目的に適合するかどうかを判定するために行われたとするクロックスプリングの主張を拒否した。

更に、CAFCは1989年のデモンストレーションの説明はそれが耐久性テストのためであったと示しており、どの報告にも特許庁への特許出願を目的とする耐久性テストだったとの記載も示唆もなかった。

実際、報告にはテストは監督機関及び業界による受け入れを目的としているとはっきり記載されていた。従ってCAFCは、たとえ1989年のデモンストレーションが耐久性テストであったとしても、特許出願を目的としたものではなく、故に実験的使用とされないと認定した。

この事件は、実験的使用の例外の適用に関する限界を明らかにした点で重要である。特許を出願するためにクレームされた特徴や全体的な動作性能がテストされている場合に限り、使用は実験的とみなされる。

この事件はテストとクレームの文言との間の関連性を要件とする判例法に加えられた。もし使用がこれらの要件に満たない場合には、実験的使用とはならないであろう。