CAFC判決

CAFC判決

CEATS 対 TicketNetwork 事件

5th Circuit, No. 21-40705 (June 19, 2023)

この事件で控訴審判所は、個人である会社社長と訴訟代理人に対する、ディスカバリーにより提出された証拠の保護命令違反に対する金銭的賠償支払命令を認めることはできないと判断した。

ディスカバリーに関連する証拠の保護命令違反に対する賠償に関する事件

TicketNetwork, Inc.とTicket Software LLC(以下、Ticketと総称)はライブ公演のチケット販売をオンラインで行っている。CEATSはオンライン・チケット販売関連の特許を所有するいわゆるNEPであり、2010年にTicketと他のプロバイダーを特許侵害でテキサス州東部地区地裁に提訴した。Ticketは、和解金の一括払いとロイヤルティ支払いを条件に和解し、特許ライセンスを得た。Ticket以外の当事者は訴訟を継続し、後に地裁は係争特許を無効と評決した。この無効判決はCAFCで支持された。

Ticketは、特許非侵害の確認とライセンス契約無効の確認を求める訴訟を地裁に提起した。これに対しCEATSは、ロイヤルティの支払いを停止していたTicketに対し契約違反の州法に基づく反訴を提起した。Ticketが確認訴訟を取り下げたため、裁判所での審理はCEATSの反訴に移った。陪審はTicketの実施料支払い停止を契約違反と認め、損害賠償とCEATSの弁護士費用の弁済を認めた。

陪審による契約違反の認定後、CEATSの守秘命令違反の問題が提起された。地裁はこの問題の審理に2年を費やし、最終的にCEATS側の守秘命令違反を認め、法人としてのCEATSと個人としてのCEATS社長と訴訟代理人2名に金銭による賠償支払いを命じた。CEATSはこれを不服として第5控訴審に控訴した。控訴審は、法人に対する賠償支払責任についての地裁の判断については支持したものの、悪意のない個人に対する賠償支払責任を認めた地裁判断を破棄した。

(コメント)

本件では、パスワード付で暗号化されたZIPファイル(「高度に機密」との警告が印字されていた)のTicketの取引先リスト(「守秘」の記載のないエクセルファイルに記載されていた)をCEAT社長が見たことが裁判所の守秘命令違反となるかどうかが争われた。第5控訴審の判例によれば、保護命令違反に対する金銭的賠償が認められるのは、(1) 違反が故意(悪意)で行われた、(2) 違反の責任が弁護士ではなく依頼人にある、(3)違反により相手方当事者に実質的な損害が生じた、(4) 軽い制裁では求められる抑止効果が得られない―場合である。(Law Funder, L.L.C. v. Munoz, 924 F.3d 753, 758 (5th Cir. 2019))