CAFC判決

CAFC判決

Burandt 対 Dudas事件

No. 2007-1504,2008,9,June 10, 2008s

本件では、年金の支払いが不可避的な遅滞であったかどうかを決めるにあたり、注目されるべきは、法律上の権利者であり、エクイティ上の所有権者ではないことをCAFCは明らかにしました。

維持年金の不払いにより失効した特許権の回復に関する事件

CAFCは、米国特許庁長官に有利な地裁の略式判決を認め、維持年金の支払いの不履行を理由にブラント(Burandt)氏の特許権の回復請求を長官が拒否したことを肯定した。

1980年にブラント氏はInvestment Rarities, Inc.(以下、IRI)のために内部燃焼機関を設計した。

1981年にブラント氏とIRIは、IRIがブラント氏の研究努力に資金を提供し、その研究によって発生した特許権、特許出願についてはIRIの所有とすることを条件に譲渡契約を結んだ。ブラント氏はその特許権の利益の1パーセントを受け取り、IRIがブラント氏の研究への資金提供を中止した場合には、その特許権を買い戻す権利を得た。

ブラント氏は「様々なエンジンスピードにおいてエンジンの性能を最適化し、もしくは空気燃料混合物の燃焼速度に関するバルブイベントのサイズとタイミングに影響を与える方法及び装置」に関する特許出願を行い、1990年10月9日に米国特許第4,961,406号(以下、406特許)が発行された。ブラント氏は406特許の発明者であり、IRIは譲受人、即ち特許権者である。

特許権者としてIRIは特許権の存続期間において、発行日から3年6ヶ月、7年6ヶ月及び11年6ヶ月の3回、維持年金を支払う必要があった。

IRIは1994年4月9日期限であった第1回目の年金を納付せず、1994年10月9日に特許権は失効した。2001年の12月になって、ブラント氏はホンダの可変バルブエンジンの使用に関する記事を見つけ、406特許について米国特許庁に連絡をした。2002年の5月21日に、ブラント氏はその特許権に対する特許権者の立場をIRIから取り戻した。

2005年10月31日に、米国特許庁はブラント氏の年金延納の受け入れ申請を拒否した。

ブラント氏は「自分が特許権に関するエクイティ上の所有権を有し、正当な理由で年金の支払いが不可能であった」とし、IRIの不履行による責任を負わされるべきではないと主張した。

米国特許庁は、ブラント氏による決定見直しの申し立てを2度拒否したため、ブラント氏は米国特許庁長官を訴え、「自身の回復請求を長官が拒否したことは、恣意的で十分な理由がなく、裁量権の乱用である」と主張した。

当事者双方が略式判決を要求したのち、地裁は長官の略式判決の申し立てを許可した。地裁は、IRIは年金の管理維持に責任があり、故意に406特許を失効させたと認定した。

地裁は、ブラント氏の訴えは不可避的遅滞分析のもと考慮されるべきであるとの彼の主張を受け入れず、「もし仮にブラント氏の訴えが考慮されたとしても、彼は年金の支払いに関して妥当な配慮を欠いていた」と認定した。ブラント氏は地裁判決に対し控訴した。

第1にブラント氏は、地裁は米国特許庁の不可避的遅滞の決定に従いすぎていると主張した。しかし、CAFCはIRIが特許権の法律上の権利者であり、維持年金に対して責任を負っていて、IRIは年金を支払わず、ブラント氏は不可避的遅滞であることを示せなかったとした長官に同意した。

法律では、「支払い猶予期間の6ヶ月を経過したのちも、長官が遅滞は不可避であったと認めるに十分な立証がされた場合、(略)長官は年金の支払いを認めることができる」と規定している。

CAFCは、維持年金の支払いに責任がある当事者と、適度に慎重である人が当然にはらうべき注意をその当事者がしていたかどうかに目を向けなくてはならない。

不可避的延滞を証明するために特許権者は、年金の支払いのために合理的な注意が払われていたこと、特許権者が通知を受けてから速やかに延納申請をしたことを立証する必要がある。

今回の事件においては、IRIが維持年金の支払いに責任がある当事者であった。IRIは適切な注意をはらう代わりに、故意に406特許を失効させた。

第2にブラント氏は、地裁は不可避的遅滞を決定する際に、法律上の権利者としてのIRIよりもエクイティ上の特許権者として自身に注目すべきであると主張した。

CAFCは、長官は当事者の所有権の表明に頼り、所有権の決定のための個別分析は不要であると認定した。

CAFCはまた、もし仮にブラント氏が406特許のエクイティ上の権利者であると米国特許庁がみなしたとしても、IRIが原簿上の権利者であり、維持年金の支払いに法律上の責任を有していたことは状況によって覆ることはないと認めた。

第3にブラント氏は、地裁は不可避基準に彼があてはまるか否かを決定する際の自身の経済状態と精神障害に十分な重きをおかなかったと主張した。1992年以前からブラント氏は精神不安の障害を患い、そのために特許権の状態について尋ねることができなかった。

CAFCは、ブラント氏の事情は不運であったけれども、そのことは「法律上の特許権者として定められたIRIの身分とは無関係」であると言及し、ブラント氏の事情について確かに考慮に入れたが、特許権の発行から彼がその失効に気づくまでの11年のあいだ、彼が特許権の状態について尋ねることができない証拠は見つからなかった。

CAFCによるブラント事件の判決は、維持年金の支払いのために関連する当事者とは、エクイティ上所有権を主張できる者ではなく、法律上の資格ある当事者であることを明らかにした。

発明者あるいは関連する他者が特許権のエクイティ上の所有権を有していたとしても、もし法律上の権利者が故意に維持年金を支払わなければ、エクイティ上の権利者は「不可避の不履行」を主張しても、失効に異議を申し立てることはできないのである。