ブルーカリプソ判決は、CBMレビューに関する特許の範囲は金融部門に結び付いた発明に限定されないことを明らかにした。この判決は、開示されたコンポーネントの組み合わせ例を引例が提供していなかったとしても、それらの組み合わせ可能の開示がれば特許性に影響を与えることを判示した。またこの判決は、特許明細書に記載のないクレーム文言の使用だけで、明細書記載要件欠如の認定の裏付けとするのは不十分であることを明らかにした。
CBMレビュー対象特許の範囲と明細書記載要件欠如の適用レベルを論じた判決
ブルーカリプソ(Blue Calypso, LLC)は携帯通信機器のピアツーピア広告システム関する5つの関連特許を所有する。グルーポン(Groupon, Inc.)は、ビジネス方法特許(CBM)に対する暫定プログラムに基づき、ブルーカリプソの5つの特許の付与後レビューを審判部へ申請した。
審判部のCBMレビューは、ブルーカリプソの特許クレームの多くは先行技術で、あるいは記載要件欠如により無効であると判断した。ブルーカリプソは、審判部が自身の特許に対するCBMレビューを認め、特許性無しの判断を下したことに対し控訴した。
CAFCはまず、特許がCBMレビューの対象であるか否かを審理した。ブルーカリプソは、特許はビジネス方法をクレームしていないので、審判部は争点の特許のCBMレビューをすべきではなかったと主張した。
ブルーカリプソの特許がビジネス方法特許であることを判断する上で、審判部はクレームを審理し、「選ばれた助成金に従って要件を満たした購読者に助成金を払う」というクレーム文言を確認した。そして、「助成金(subsidy)」という文言を「ある人が他人に与える経済的支援」として解釈した。
この解釈に基づき審判部は、無効が主張されたクレームは本質的に金融に関する内容であり、CBMレビューの対象であると結論付けた。
CAFCは審判部の決定理由に同意し、ブルーカリプソ特許クレームは、「購読者」が広告宣伝の労力を手伝うように広告主が経済的に誘導する方法に関するものであったとした。
CAFCは、CBM特許は伝統的に金融セクターを起源とする「金融商品またはサービス」に関するものでなければならないというブルーカリプソの主張も退けた。
CAFCは、この主張は最近のCAFC判決であるVersata Dev. Grp., Inc.対 SAP Am., Inc.事件, 793 F.3d 1306 (Fed. Cir. 2015) およびSightSound Techs., LLC 対Apple Inc.事件, 809 F.3d 1307 (Fed. Cir. 2015)により排除されると説明した。
これらの判決はCBMレビューの適用を金融業界に関係する特許クレームに限定することを否定するものである。
CAFCはさらに、ブルーカリプソ特許クレームの多くが先行技術によって先行されているとの審判部の認定を誤りとするブルーカリプソの主張を審理した。
ブルーカリプソは、自身の特許の中で述べていた2つのツールが共に先行技術引例に開示されていたことや、その先行技術がブルーカリプソ特許のクレーム中の他のエレメントについて教示していたことについて争っていなかった。
代わりに、ブルーカリプソは、2つのツール、すなわちターゲット・マーケティングの「キャンペーン」ツールおよび「お友達紹介(refer-a-friend )」ツールが別個のものであり、審判部が先行技術引例には明記されていないにも関わらずこれらの別個のツールを組み合わせたことは誤りであると主張した。
審判部は、先行技術引例の特徴を複数の別々に単離した方法を開示しているとしたブルーカリプソの主張を退け、引例は2つのツールを一緒に使用することを例示していないが、開示された機能を組み合わせることは想定していると認めた。
審判部の新規性無しの判断を追認してCAFCは、先行性(anticipation)に関し、引例はクレームエレメントの全てを必ずしも明記している必要はないと説明した。
CAFCは、引例がコンポーネントや機能が組み合わせ可能であることを教示しており、当業者がその組み合わせを実施可能であるならば、その引例はその発明に先行していると述べた。
CAFCはさらに、審判部による明細書記載要件欠如に基づく特許性なしの決定は誤りであるというブルーカリプソの主張を審理した。審判部に対し、グルーポンは、「承認タグ」や「トークン」といったクレーム文言は、明細書の記載がないため記載要件を欠いていると主張した。
ブルーカリプソは、これらのクレーム文言が実行可能なリンクを指しており、「承認タグ」や「トークン」の使用に関するクレームの記載と同じ方法で実行可能なリンクの使用を明細書に明記されていることを、当業者であれば理解するだろうと主張した。
審判部はブルーカリプソの主張を却下し、特許明細書にクレーム文言の記載がないことは最も有力な証拠であると判断した。
CAFCはこの決定を破棄し、審判部は「タグ」や「トークン」といった文言の記載が明細書に無いという単なる事実に不当に重きを置いたと認定し、これは審判部が特定した1つの裏付けに過ぎず、判例法に反しているとの見解を示した。
CAFCは、審判部の決定が実質的証拠によって裏付けられているとしたグルーポンの主張を却下した。
Key Point?ブルーカリプソ判決は、CBMレビューに関する特許の範囲は金融部門に結び付いた発明に限定されないことを明らかにした。この判決は、開示されたコンポーネントの組み合わせ例を引例が提供していなかったとしても、それらの組み合わせ可能の開示がれば特許性に影響を与えることを判示した。またこの判決は、特許明細書に記載のないクレーム文言の使用だけで、明細書記載要件欠如の認定の裏付けとするのは不十分であることを明らかにした。