この事件でCAFCは、IPRで有効とされたクレームについて、PTABでの専門家証言に基づきながらも、CAFCでその議論を発展させ、特許を無効にした。
Gesture Technology Partners (GTP)は、電子光学センサーとデジタルカメラを使用した画像取得の技術に関する特許(8,878,949)の特許権者である。この特許は2020年5月に満了した。権利が満了した後の2021年6月、AppleはNumazaki特許及びNonaka特許を引用して、949特許の無効を主張してIPRを申請した。PTABは、クレーム1-3、5-10、12―17を自明を理由に無効を決定したが、クレーム4、11、18については自明とは言えないと判断しクレームの有効を決定した。
Appleの控訴で提起された唯一の争点は、審決が Numazaki を踏まえて、請求項4の文言「固定」が自明でないとの判断が適切であったか否かであった。
CAFCにおいて主張可能な議論は、米国特許庁の審判部でのIPRの手続きの中で主張立証した事実に限定される。
さて、本特許は、カメラが所定のジェスチャーを検出した際にユーザーコマンドを実行する「電気光学センサー」と「デジタルカメラ」をもつ携帯装置である。そして、「電気光学センサー」がカメラの視野内にジェスチャーを検出した際に「デジタルカメラ」が被写体の画像を撮影する。
そして、クレーム4は「電気光学センサー」と「デジタルカメラ」の相対位置関係が固定されている発明を請求している。
Appleは審判部がAppleの専門家の証言を不当に無視したと主張し、その専門家の証言を考慮すれば、専門家が「電気光学センサー」と「デジタルカメラ」の関係が固定であることが望ましいとの点で一致していたことが明白であると公知例のNumazakiをベースにPTABでの議論を発展させた。
その結果、Numazakiのビデオ会議に関する発明が、話者の画像の撮影を維持するために「光抽出ユニット」と「光検出アレイ」を並べて配置し、互いの視野が重なるように配置していることを説得した。
この結果、「光抽出ユニット」に対応する「電気光学センサー」と「光検出アレイ」に対応する「デジタルカメラ」を相対的に固定することは自明であることが立証され、クレーム4の特許性の否定に成功した。