CAFC判決

CAFC判決

Alexsam, Inc. 対 IDT Corporation 事件

No. 2012-1063,2013,9,20-May-13

侵害に関する技術問題についての詳細な専門家証言の重要性を示した判決,この事件は、侵害に関する技術問題についての詳細な専門家証言の重要性を示した。専門家証言は、クレーム限定の全てを満足させるのには不十分な場合、侵害の立証に致命的な影響を及ぼすことになる。また、ディスカバリー手続において関連情報を時宜にかなって開示しないことに実質的なリスクがあることが示された。

侵害に関する技術問題についての詳細な専門家証言の重要性を示した判決

この事件は、アレックスサム(Alexsam, Inc)がIDT(IDT Corporation)に対して起こした特許侵害訴訟の上訴及び交差上訴に関連する。アレックスサムは米国特許第6,000,608号(以下、608特許)を保有し、この特許は、ギフトカードやプリペイド電話カードのような多機能カードをPOS端末において有効化し、使用を可能にするシステムを規定する。争点のクレームはPOS端末が「カードシステムで用いられるソフトウェアに関して再プログラミング、カスタマイズまたはその他の改変」が行われていないことを要求する。クレームはまた、米国銀行協会によって承認された銀行用の銀行識別番号(BIN)でカードが符号化されることを要求する。

2007年に、アレックスサムは、IDTが608特許の特定のクレームを侵害すると主張して、テキサス州東地区地方裁判所にIDTに対する訴状を提出した。

アレックスサムは、とりわけIDTの3つのシステム、すなわちウォルグリーンズによって使用され、ウォルグリーンズが仲介者として動作するシステム(以下、ウォルグリーンズ・システム)と、小規模な小売業者によって使用され、第三者のEWIが仲介者として動作するシステム(以下、EWIシステム)と、様々な当事者によって使用される同様のシステムのグループ(以下、諸システム)とを訴えた。

陪審員はウォルグリーンズ・システム及びEWIシステムがアレックスサムの特許を侵害すると判断し、地方裁判所の判事はディスカバリーの濫用の制裁として諸システムもアレックスサムの特許を侵害すると判断した。

地方裁判所は、ウォルグリーンズ・システム及びEWIシステムが侵害しないという法律問題としての判決を求めるIDTの申し立てを却下した。IDTは上訴した。

CAFCは、アレックスサムが法律問題としての侵害を立証しなかったと判断して、IDTの申し立ての地方裁判所による却下を破棄した。アレックスサムの専門家は単にIDTのカードの有効化に使用される端末が「変更されていなかった」ことを証言した。

しかし、専門家はIDTのカードの有効化を可能にするために端末のソフトウェアに対して実際に修正がされなかったことを証言しなかった。反対尋問で、専門家は、IDTのシステムで使用されるPOS端末が「再プログラミング、カスタマイズまたはその他の改変」が行われなかったかどうかについて何も意見を出さなかったことを認め、さらに自身が端末の専門家ではないことを認めた。

この立証の失敗に基づいて、CAFCは、アレックスサムが実質的な侵害の証拠を提示しなかったと判断し、ウォルグリーンズ・システム及びEWIシステムに関して非侵害であるという法律問題としての判決を求めるIDTの申し立てを地方裁判所が却下したことは誤りであったと判断した。

しかし、CAFCは、IDTによるディスカバリーの濫用の制裁として諸システムに関して地方裁判所が侵害を認定したことを支持した。IDTは、自身の特定のカード製品がそのカード番号にBINを含んでいたという事実を開示しなかった。

第一に、IDTは、「訴えに係るクレームまたは防御に関連するすべての書類の写し」を提出することを両当事者に要求した地方裁判所の最初のディスカバリー命令に従わなかった。CAFCは、このような文章は諸システムで有効化されるカードがBINで符号化されていたことを開示する文書を含んでいただろうと判断した。

第二に、IDTはアレックスサムによる強制の申し立てに応じて地方裁判所が命令した後でさえも、各侵害被疑カードに関連するBINを識別することをIDTに要求するアレックスサムの質問書に十分に応答しなかった。

最後に、数か月後のファクト・ディスカバリーの最終日に、IDTの証人は諸システムに関連するカードがBINを有することを開示する文書を提出した。

この分析では、CAFCは、地方裁判所による制裁が公平かつ公正であり、アレックスサムが立証することを求めた事実と実質的な関係性を有しており、懲罰及び抑止の目的を満たすかどうかを問うた。

CAFCは、特にアレックスサムが提出を求めた情報と地方裁判所によるIDTへの再三の警告との関連性を前提として、この事件で3つの条件すべてが満たされると判断した。

ホールデン・メイヤー判事は、対象クレームが米国特許法第101条が求める適格性要件を満たさないので、608特許は無効と判断されるべきであるとの反対意見を主張した。

同判事は、特許クレームが発明概念を何も提供せず、その代わりに単に既存の技術を用いて多目的カードを有効化するための効率的で廉価な方法を抽象的に記載するだけであると考え、608特許は革新的なものを何も提供せず、基本的な使用または基礎アイデアを先取りしようとしただけと強調した。

Key Point?この事件は、侵害に関する技術問題についての詳細な専門家証言の重要性を示した。専門家証言は、クレーム限定の全てを満足させるのには不十分な場合、侵害の立証に致命的な影響を及ぼすことになる。また、ディスカバリー手続において関連情報を時宜にかなって開示しないことに実質的なリスクがあることが示された。