この事件でCAFCは、クレームされたシステムは既存のコンピュータ技術を用いてデータを収集・操作・表示することに向けられているとして、特許適格性を認めなかった。この事件のように、クレームで発明を抽象的な文言で特定すると特許適格性が否定される。これを避けるためには、発明特有の技術、人間の処理を越えた技術で発明を特定することが必要である。
技術が特許適格性の壁を越えているかどうかが判断された事案
米国特許第8,701,167号(’167特許)、他3件の特許権者のAI Visualize, IncはNuance社が提供している医療画像プラットフォーム(PowerShare Networkなど)を特許侵害として、2020年、Nuance社およびMach7 Technologiesをデラウェア州連邦地方裁判所に提訴した。
地裁は、特許された発明は、既存のコンピュータやネットワーク技術をそのまま使って、既存のアルゴリズムを実行しているだけであり、コンピュータ自体の機能や効率を向上させるような技術ではないと特許適格性を否定した。
CAFCは地方裁判所の米国特許法§101の下の、特許適格性を判断し、その発明が特許不適格な主題に向けられているとの、地裁の判断を支持した。
この判決に対して、AI VisualizeはCAFCに控訴している。
事案と判決の要点:
本件の特許は、MRIスキャン等の医療画像をネットワーク経由で表示する高度な可視化システムに関するものである。画像は、3次元形式の「ボリューム可視化データセット(VVD)」として集中サーバに保存される。VVDは、既存の2次元スキャンから3次元表示を生成する手法として周知であった。
本発明の改良点とされたのは、大容量のVVDから派生する2次元フレームを、低帯域のWebポータルを通じて効率的に配信・表示する点にあった。あるクレーム群では、ユーザ端末に既に保存されている仮想ビューのフレームを判定し、集中サーバから追加フレームを転送する量を最小化する処理が規定されていた。別のクレーム群では、同様の処理に加え、要求されたユーザビューに「一意の識別キー」を付与していた。さらに別のクレーム群では、ローカル保存の有無を確認せず、全フレームを集中サーバから転送していた。
CAFCは、Alice Corp. v. CLS Bank Int’l(573 U.S. 208 (2014))で示された特許適格性の二段階分析を適用した。Aliceステップ1において、CAFCは、クレームは標準的なインターネット接続を介して大容量VVDを送信する際の従来技術上の問題に対処するものであるとしつつ、技術的進歩の本質は「集中ストレージに保存されたユーザの要求データを、選択的に遠隔アクセスすること」にあると認定した。クレームがコンピュータ機能自体の改良に向けられているとの主張は退けられ、全体として特許不適格な抽象的概念に向けられていると判断された。
Aliceステップ2では、クレームは「データを変換し、コンピュータを用いてデータを収集、操作、表示すること」に向けられていると判断された。ユーザ端末で「オンザフライ」に仮想ビューを生成する点が特許可能であるとの主張も退けられ、仮想ビューは既存のVVDの一部を操作することによって達成されているに過ぎないとされた。特にCAFCは、明細書に記載されたより詳細な技術説明に基づく主張を考慮せず、クレーム文言による技術的特徴のみに基づいて判断を行い、係争クレームは特許不適格な抽象的概念に向けられているとの地裁判断を支持した。
この事件からの教訓:
クレームで発明を抽象的な文言で特定するとこの事件のように発明の特許適格性が否定される。これを避けるためには、発明特有の技術、人間の処理を越えた技術で発明を特定することが必要である。
報告者紹介
Mark Montague
Partner, Cowan, Liebowitz & Latman, P.C.
Daniel Basov
Senior Attorney, Cowan, Liebowitz & Latman, P.C.