抽象的なアイディアとアイディアの適用分野の限定では特許適格性を持つ発明にならないと論じた判決,この事件においてCAFCは、審査の対象となるクレームが、特許対象外の発明を記載しているため、地方裁判所の無効の略式判決を支持した。出願人は、抽象的概念を超えた保護に値する発明となるように、有効な発明特定事項をクレームに記載しなければならない。
抽象的なアイディアとアイディアの適用分野の限定では特許適格性を持つ発明にならないと論じた判決
アクセンチュア(Accenture Global Services, GmbH)対ガイドワイヤ(Guidewire Software, Inc.)事件において、CAFCは、米国特許法第101条の規定に基づき、米国特許第7,013,284号(以下、284特許)を主題が特許対象外であることを理由に無効としたデラウェア州地方裁判所の略式判決を支持した。
284特許は、各種ソフトウェア部品を含む、保険関連のタスクを管理するコンピューター・プログラムを開示していた。
争点となった特許クレームは、保険機構内で行われるタスクを生成するシステムを主題としている。クレームされたシステムは、①保険取引データベース、②タスク・ライブラリー・データベース、③保険取引データベースにアクセスするクライアント・コンポーネント、および、④ソフトウェア・コンポーネントと相互作用して、イベントを処理し、実行すべきタスクを決定するイベント・プロセッサーを制御するサーバ・コンポーネントを含む。
基本的に、システムは保険取引情報をデータベースに収納し、特定のイベントに対して実行するタスクを決定し、そのタスクを特定の個人に割り当てるものである。
地方裁判所において、ガイドワイヤは、284特許のクレームの内容は特許対象外の抽象的概念を主題としているため無効であると主張し、略式判決の申立をした。
地方裁判所は、ガイドワイヤの申立てを認める判決を下し、クレームは抽象的概念であるデータの編成を対象とし、方法クレームはこの抽象的概念の具体的な実施方法に限定されておらず、さらにシステムクレームは方法クレームの表現と一致していることを判決理由として挙げた。アクセンチュアは、システムクレームに関する無効判決のみについて控訴した。
CAFCはまず、方法クレームに関する無効判決をアクセンチュアが控訴しなかったので、方法クレームに特許性がないことを前提にした上で、地裁の同判決を確定した。
この出発点からCAFCは、システムクレームが方法クレームに対して異なり、さらにクレームの範囲を狭めるような有意な限定を含むかについて検討した。
アクセンチュアは、システムクレームは方法クレームに対して以下の4つの有意な相違点を有すると主張した。①保険金請求フォルダ、②タスク・ライブラリー・データベース、③サーバ・コンポーネント、④タスク・エンジン。
CAFCは、この主張を退け、コンポーネントの名称が記載されてないとしても、上記4つのソフトウェア・コンポーネントは方法クレームにも含まれていると判断した。
保険金請求フォルダに関しては、CAFCはフォルダが保険金請求情報を管理するための構造化したインターフェイスを提供していると同様に、方法クレームは保険金請求を構造化した環境に保存していると認定した。そして、タスク・ライブラリー・データベースは、実行するタスクに関するルールを保存するものだと見解した。
CAFCは、保険取引の情報に適用するタスクを決定するためのルールを適用する、ほぼ同一の要件が方法クレームにも含まれていると判断し、サーバ・コンポーネントおよびタスク・エンジン・コンポーネントも同じく方法クレームにも含まれていると結論した。
CAFCはさらに、方法クレームを参照せずにシステムクレームを分析し、システムクレームの非特許性を認める同じ結論に至った。ここでCAFCは、システムクレームは、イベント発生後に実行するタスクを生成するという抽象的概念に対して区別をつけるような限定を含んでいないと認定した。
アクセンチュアは、システムクレームにおけるいくつかのコンピューター・コンポーネントの記載、および明細書におけるソフトウェアの具体的な開示によってクレームの特許性が明らかであると主張した。
判例に基づき、CAFCは、抽象的アイデアをコンピューターにおいて実施することと、使用分野の限定とでは抽象的アイデアの特許性は認められないと判断した。さらにCAFCは、クレームについて適正な分析がされているため、明細書を参酌すべきといったアクセンチュアの主張を退けた。
レーダー(Rader)裁判長は、多数派意見に反対した。レーダー裁判長は、クレームに記載されたシステムは、コンピューター・コンポーネントの特定の組み合わせを必要とするため、特許性があると意見した。さらにレーダー裁判長は、記載された組み合わせは、抽象的概念の可能な使用形態を全て先取りしないようにクレーム範囲が制限されていると判断した。
アクセンチュア事件は、コンピューターに関連する発明を対象とする特許クレームが特許性を具備しているか、特許性を具備していない抽象的概念であるかを問う一連の事件における直近の事件である。
この判決から、抽象的概念を記載するクレームを防ぐようなクレーム限定の有無をより厳しく判断するCAFCの姿勢の傾向が見られる。コンピューターの単なる一般的な使用や方法発明における具体的な限定を有しない概念的なクレームは、特許性を具備しないということを注意喚起する事件である。
Key Point?この事件においてCAFCは、審査の対象となるクレームが、特許対象外の発明を記載しているため、地方裁判所の無効の略式判決を支持した。出願人は、抽象的概念を超えた保護に値する発明となるように、有効な発明特定事項をクレームに記載しなければならない。