CAFC判決

CAFC判決

Ex Parte Desjardins事件

PTAB, No. 2024-000567 (September 26, 2025)

この事件でUSPTOのAppeal Review Panelは、AI技術を単なる「アルゴリズム」として一律に排除する審査姿勢を明確に否定した。破滅的忘却の回避、メモリ削減、システム構成の簡素化など、アルゴリズムがもたらす具体的な「技術的効果」を示すことが§101拒絶を回避する鍵となる。

USPTO特別パネルが厳格過ぎる特許適格性(101条)の判断基準を緩和した事件

USPTOテクノロジーセンター210(特許分類)の特許出願第16/319,040号の審決に対して、ARP(Appeal Review Panel)が介入し、厳格過ぎる特許適格性(101条)の判断基準を緩める審決を下した。

ARPは、PTABの決定に疑義がある場合や、重要な法的・政策的判断を確立する必要がある場合に、米国特許商標庁の長官が直接介入し、PTABの決定を再検討・監督するための特別パネルである。

この判断は、「先例的(precedential)」と指定され、今後の事件における引用可能な判断として位置付けられている。具体的には、この特別パネルは、特許適格性(101条)の判断を緩めた。

米国特許出願第16/319,040号(以下、本発明)は連続的タスクに対して機械学習モデルを訓練するためのコンピュータ実装方法に関する。新たなタスクを学習すると、以前に学習したタスクの知識を失ってしまう「破滅的忘却(catastrophic forgetting)」の問題を解決することを目的としている。
本発明は、複数タスクを効果的に処理できる単一のモデルインスタンスを維持する方法を提供する。システムは、まず第1タスクにおけるモデルパラメータの重要度を算出し、重要度値を割り当てる。次に、第2タスクの学習時には、第1タスクで重要とされた一部パラメータの重要度を調整または制約することにより、(a)第2タスクの性能を最適化しつつ、(b)第1タスクの性能を維持することが可能となる。
特別パネルは、単一モデルで済むことによる記憶容量の削減や、システム構成の簡素化といった具体的な技術的効果を、特許適格な技術的改良であると認定した。

事案と決定の要点:

特別パネルは、Alice判決およびMPEP§2106に基づく二段階分析を適用した。まず、クレームは法定の発明カテゴリーに該当すると認定された。次に、MPEPステップ2A(Aliceステップ1)において、クレームが「複数パラメータの事後分布の近似を計算する」という抽象的概念を含むことが認定された(これは出願人も争っていない)。

しかし、Prong 2Bで、独立クレーム1は、全体として抽象的概念を「実用的応用に統合している」と判断された。特に、「新しいタスクを学習しても、従来タスクの性能を維持できる特定の学習戦略」に関するクレーム限定は、連続学習システムにおける破滅的忘却という技術的課題を直接解決するものであるとされた。

また、AI発明を一律に特許保護から排除する考え方や、機械学習を単なる「アルゴリズム」として高い抽象度で評価する姿勢を明確に否定した。

結論として、ARPは§101拒絶を取り消したが、先行技術に基づく§103拒絶については維持した。

実務上の影響:

AI発明への追い風となる決定:AI技術を単なる「アルゴリズム」や「汎用コンピュータによる実行」として一律に拒絶する傾向を戒める内容となっており、AI分野の出願人にとって有利な先例となる。

明細書の記載の重要性:「なぜそのアルゴリズムが技術的に優れているのか(メモリ削減、処理効率化など)」を明細書に具体的に記載しておくことが、§101拒絶を回避する鍵となることが再確認された。

審査方針の明確化:AI発明に対しては、§101(適格性)で門前払いするだけではなく、§ 102(新規性)、§ 103(進歩性)、§ 112(記載要件)といった従来の基準でも判断すべきであるという方針が示された。

著者:

Mark Montague, partner, Cowan, Liebowitz & Latman, P.C.

Daniel Basov, Senior Attorney, Cowan, Liebowitz & Latman, P.C.