CAFC判決

CAFC判決

Acorda Therapeutics, Inc.対Alkermes PLC事件

CAFC No. 2023-2374 (July 25, 2025)

この事件でCAFCは、ライセンス許諾された特許の権利満了後に支払われたロイヤルティの払い戻しを命じた仲裁裁定に対するCAFCへの控訴を、特許法に基づく事案ではないという理由から、第2巡回区控訴裁に移送した。

特許法上の問題ではないとして仲裁裁定の争いを他裁へ移送した事件

Alkermes PLCは多発性硬化症(multiple sclerosis)の治療に有効な活性物質の特許(5,540,938)を保有する。Acorda Therapeutics, Inc.(ATI)はAlkermesと契約を結び、活性物質の提供を受け、938特許のライセンスを受けて多発性硬化症治療薬Ampyra®を開発した。両者間の契約には、紛争は仲裁裁定により解決される旨の規定があった。

938特許は2018年7月に満了し、特許満了後にAmpyraの後発薬が上市されたため、ATIは契約の修正(特にロイヤルティ支払条項)を求めたが、Alkermesはその要求に応じなかった。ATIは938特許満了後もロイヤルティ支払いを継続していたが、2020年7月、許諾特許満了後のロイヤルティ支払いは無効であることの確認と、938特許満了後に支払われたロイヤルティの返還を求める仲裁裁定を米国仲裁協会(AAA)に請求した。

AAAは、特許満了後のロイヤルティの支払い条項は最高裁判例に基づき無効であることは認めたものの、支払い済みロイヤルティの返還については仲裁手続きが開始された後、つまり2020年7月以降の支払分に限定されると裁定した。ATIは、ニューヨーク州連邦地裁にこの裁定内容の確認(ただし、返還金についての裁定は除外)を求めたが、連邦地裁は、全ての裁定項目(返還金を含む)についてAAAの判断を支持した。

ATIは返還金の除外認定についての問題だけを争点としてCAFCに控訴した。CAFCは、ATIの申立ては連邦特許法の問題ではないので管轄がないとしてATIの控訴を退け、連邦管轄をもつ第2巡回区控訴裁(ニューヨーク州などを管轄)に移送する判決を下した。CAFCはその理由を次のように説明した。仲裁人の裁定の変更を求める申立ては特許法の問題ではなく、ニューヨーク州法に基づき第2巡回区控訴裁が判断すべき問題である。