CAFC判決

CAFC判決

Sierra Wireless, ULC 対 Sisvel S.P.A. 事件

CAFC, No. 23-1059 (March 10, 2025)

この事件でCAFCは、発明要素の関係を相互排他的であると解釈し、2つの発明要素に対し1件の先行特許が適用できると解釈したIPR決定を否定し、2つの発明要素は相互排他的ではないとした。

Sisvelはデータ送信方法に関する特許(7,869,396)の特許権者である。

この特許は従来技術であるAutomatic Repeat Request(ARQ)の改良特許で、データ未受信検出後にタイマー切れまで待つようにすることでステータスレポートの送信を抑制することに特徴がある。

Sierra WirelessはSachs発明(WO 02/091659)を先行特許として引用し、396特許の10クレーム全てにIPRを申請した。IPRの争点は、396特許の発明要素(c)(タイマー切れになる前に未受信だったデータが受信されたらタイマーを停止させる処理)と発明要素(d)(タイマー切れとなった後未受信データの再送のためレポートを送信する処理)のいずれかが作動しているときに他方が作動を停止しているかどうか、つまり、相互排他性をもつかどうかーであった。

PTABは、要素(c)と要素(d)が相互排他性(conditional limitations)をもつので、先行例に(c)か(d)のいずれかの開示があれば自明性を欠くとしてクレーム1,2,6~8の5つのクレームは自明と決定した。しかし、残りの従属クレーム(3~5、9、10)については無効を立証していないと決定した。Sisvelは無効とされたクレーム(1、2、6~8)について控訴し、Sierraも従属クレームを有効とした判定を不服として控訴した。

CAFCは、平易かつ明瞭な文言解釈を行い、本発明では要素(c)と要素(d)の両方の処理が求められるため、二つの処理は相互排他性がないと認定し、先行例には要素(d)の開示がないのでクレーム1、2,6~8についての無効決定は誤りであるとして、PTABの決定を破棄し、差し戻した。その理由をCAFCは次のように説明した。

PTABのクレームのconditional limitationsの解釈には誤りがある。先行特許(Sachs)にconditional limitationsが開示されているとの認定は証拠により支持されていない。

本件では専門家証人の適格性にも触れ、シスベルの専門家証言は無線通信のシステムデザイナーであっても電気分野の学位や経験がなく当業者として適格でない。それにも関わらず、その証言を証拠として使用したのはPTABの裁量の濫用であると判示した。