この事件でCAFCは、IPRでのPTABのクレーム文言の解釈に誤りがあったが、その誤りは対象特許の自明性判断を覆すほど重要ではないとして、PTABのクレーム無効の判断を支持した。
HD Silicon Solutions (HDSS)は、窒化チタン層の上にタングステン層を蒸着して集積回路にローカル相互接続層を形成する方法に関する特許(6,774,033)の特許権者である。Microchip Technology(Microchip)は、033特許に対するIPRを申請し、無効理由として先行特許5,847,467を引用した。IRPでは、クレーム中の文言「タングステンを含む(comprising tungsten)」の解釈が争われた。PTABはそれを、タングステンとタングステン化合物の両方を含むと解釈し、引用された先行特許単独でも、また、他の先行特許との組み合わせてでも自明であり、033特許は無効であると認定した。HDSSは、PTABのクレーム解釈が誤りであり、無効資料の組み合わせが不当であるとしてCAFCに控訴した。
CAFCは、033特許を無効としたPTABの判断を支持し、その理由を以下のように述べた。PTABが「タングステンを含む」の文言をタングステン化合物をも含むと解釈したのは誤りであるが、その誤りは033特許の自明性の判断に影響を与えるものではない。引用された先行特許は、タングステン単体とケイ化タングステン層の両方を開示しており、その開示から033特許のクレームは自明である。
HDSSは、①引用された先行特許は単独では無効資料になり得ない、②当業者をして他の先行特許と組み合わせる動機付けが立証されていないなどのことを理由にPTABの判断が誤りであると主張した。しかし、その主張は受け入れられなかった。Microchipが提出した専門家証言により、当業者が先行特許を組み合わせる理由が合理的に説明されており、その証言を根拠にして組み合わせの動機付けを認定したPTABの判断に誤りがないとの判決をCAFCは出した。